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第27話

 駐車場に車をとめ、月野とひなたはエントランスのほうへと向かう。  月野の住んでいるマンションは十階建ての小奇麗なもので、彼の部屋は七階にあるという。  広いエントランスホールの奥にあるエレベーターに乗り込み、七階へ着いた。  清潔な廊下を少し歩き、703号室の前で月野は足をとめた。  プレートには『月野和哉』と出ている。  奥さんの名前……出てないや。  ひなたはなんとなくホッとした気持ちで、鍵を開ける月野の後ろで、クリスマスケーキの袋を持って立っていた。  ドアが開かれると、明るい部屋の中から若い女性の華やかな声が、「おかえりなさい、和哉さん」と迎える……というふうな光景をひなたは想像し、覚悟していたのだが、実際は開け放たれた部屋の中は真っ暗だった。  月野が電気のスイッチを入れたのだろう、次の瞬間にはまばゆい光が点灯した。 「どうぞ、ひなた」 「お、お邪魔します……」  ……奥さんは奥の部屋にでもいるのかな?  無意識に身構えながら、ひなたは中へ入る。  玄関を入ったら、まずダイニングキッチンがあり、冷蔵庫や電子レンジなどの家電と小さな食器棚、二人掛けのテーブルがある。 「ひなた、ケーキ、冷蔵庫に入れておいたほうがいいだろう」 「あ、はい」  冷蔵庫にケーキを入れる月野の背中に、ひなたは遠慮がちに問いかけた。 「あの、月野さん。奥さん、具合でも悪いんですか? だったらオレ、帰りますけど……」 「は?」  月野は怪訝そうな顔をした。 「なに言ってるんだ? おまえ」 「な、なにって、月野さんの奥さんのことだよ」 「オレはバツイチで、今は独身だけど?」  え? えー!? 「え? え? でも、だって。じゃ、その左手の薬指の結婚指輪は……」 「……ああ、これのせいでおまえ、オレが結婚してるって誤解したのか?」 「ご、誤解もなにも、そんな指輪してたら、誰だって結婚してるって思うよ」  ひなたはなにがなにやらわけが分からず、泣きそうになった。

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