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第30話

「どうして、そんなこと……」  ひなたが聞くと、月野は当時の苦い思い出を話してくれた。 「……オレは大学を出て、すぐに結婚したんだけど、半年もたたないうちに結婚生活は亀裂が入りだしてね。妻は仕事ばかりのオレに不満を抱き、オレはそんな彼女を重荷に感じ始めて。結局、一年も経たないうちに離婚した。……離婚っていうものは、ものすごくエネルギーがいるものだったよ。オレも彼女もいたずらにお互いを傷つけ合って。もうあんなのは二度とごめんだ。だからあのときの修羅場を忘れないように、この指輪をいつもしてるんだ」  話し終えると、月野は大きく溜息をついた。 「もう誰も好きにはならないってことなの? 月野さん……」 「そうだな。もう恋も結婚も遠慮したいんだ」 「そうなんだ……」  ひなたはそう言うしかなかった。  時間も遅くなったので、ひなたを部屋へ泊めることにした。  ひなたはものすごく緊張し、その緊張が伝わり、月野のほうも緊張してしまったくらいだ。    先にひなたを風呂に入らせてやり、続けて月野が入り、出てきたときには、彼はソファにもたれて眠り込んでいた。

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