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第32話

 ひなたが喉の渇きを感じて目を覚ましたとき、辺りは真っ暗だった。  …………?  寝ぼけた頭のまま寝返りをうつと、目の前に月野の寝顔。  わっ……?  驚くのと同時に一気に記憶が繋がった。  ああ、オレ眠っちゃったんだ……。  ここは……? も、もしかして月野さんのベッド?  好きな人のベッドで好きな人と一緒に寝ているという状況に、ようやく寝ぼけた頭が追いつき、ひなたの胸の鼓動がものすごい勢いで速くなる。  月野は黒のパジャマを着て、穏やかな寝息を立てている。  ひなたは彼の端整な顔を見つめた。  昨日の月野の言葉を思い出す。 『もう恋も結婚も遠慮したいんだ』  ……そんなに辛い思いをしたのかな? 月野さん。  ねえ、オレじゃ無理なのかな? 月野さんの心を癒すこと、できないのかな?  ひなたはそっと体を動かすと、月野のほうへ近づき、彼の体に縋りついた。  好きです……月野さん……。大好き……。  月野さんが振り向いてくれなくたって、オレは月野さんが好きだもん。  傍にいれるだけでいいんだもん……。

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