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第38話

 月野の敏腕により、ひなたの仕事は順調に増えていき、世間の知名度も高くなっていった。  まだまだ通行人Aとかセリフがあっても一言だけとか、そういうレベルだが、役者としても一歩を踏み出している。  高校生活と仕事、毎日が忙しく過ぎていくが、ひなたはとても充実していたし、幸せだった。  月野は毎日、顔を合わせたときと、仕事が終わり別れるとき、キスをしてくれるようになった。  最初は触れ合わせるだけだったキスが、回を重ねるごとに深く激しくなっていく。  仕事が休みの前日は、ひなたを自宅マンションへ泊めてくれるようにもなった。  大人の男のテクニックでひなたをイカせて、ときにはクリスマス・イブの夜のように二人の昂ぶりをぴったりと合わせて、一緒に高みへと昇りつめる。  だが、月野は体を繋ぐことだけはしてこなかった。  キスを交わし、手でひなたを愛してくれ、時々は二人で同時に絶頂を迎える。  ひなたはそれで充分幸せだったし、満たされていた……はずだった。  しかし、恋心というのは、日に日に貪欲になっていくものらしい。  ひなたは月野のすべてを手に入れたいと思うようになっていった。  どんなことでも一途で真っ直ぐなひなたは、仕事場へ向かう車の中で、単刀直入に月野に聞いてみた。 「月野さん、オレのこと子供あつかいしてるでしょ?」  月野はハンドルを握りながら苦笑した。 「なんだよ? 急に」 「……オレのこと子供あつかいしてるから、さ、最後までしないんでしょ?」 「……は?」  月野は絶句した。

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