38 / 55
第38話
月野の敏腕により、ひなたの仕事は順調に増えていき、世間の知名度も高くなっていった。
まだまだ通行人Aとかセリフがあっても一言だけとか、そういうレベルだが、役者としても一歩を踏み出している。
高校生活と仕事、毎日が忙しく過ぎていくが、ひなたはとても充実していたし、幸せだった。
月野は毎日、顔を合わせたときと、仕事が終わり別れるとき、キスをしてくれるようになった。
最初は触れ合わせるだけだったキスが、回を重ねるごとに深く激しくなっていく。
仕事が休みの前日は、ひなたを自宅マンションへ泊めてくれるようにもなった。
大人の男のテクニックでひなたをイカせて、ときにはクリスマス・イブの夜のように二人の昂ぶりをぴったりと合わせて、一緒に高みへと昇りつめる。
だが、月野は体を繋ぐことだけはしてこなかった。
キスを交わし、手でひなたを愛してくれ、時々は二人で同時に絶頂を迎える。
ひなたはそれで充分幸せだったし、満たされていた……はずだった。
しかし、恋心というのは、日に日に貪欲になっていくものらしい。
ひなたは月野のすべてを手に入れたいと思うようになっていった。
どんなことでも一途で真っ直ぐなひなたは、仕事場へ向かう車の中で、単刀直入に月野に聞いてみた。
「月野さん、オレのこと子供あつかいしてるでしょ?」
月野はハンドルを握りながら苦笑した。
「なんだよ? 急に」
「……オレのこと子供あつかいしてるから、さ、最後までしないんでしょ?」
「……は?」
月野は絶句した。
ともだちにシェアしよう!