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第42話
ひなたの誕生日の二十八日がやって来た。
この日、ひなたは学校が終わったあと、演技のレッスンと、連続ドラマに出てくる喫茶店でのウエイター役という仕事が入っていた。
セリフは、「いらっしゃいませ」というだけだが、割と長く画面に映り込む。
ひなたはやや緊張気味だったが、撮影も無事に済み、満面の笑みで月野のもとへと走ってきた。
「あんなに長くカメラに映る役なんて初めてだから、すっごい緊張したー」
「ウエイター役、かっこよかったよ」
月野が褒めると、
「ほんとに? うれしいー」
ひなたは笑みを深めた。
まだドラマの撮影は続くが、ひなたの出番はこれ一度きりなので、他の出演者とスタッフに挨拶をしてから、スタジオをあとにした。
月野の車の後部座席に落ち着いたひなたは、月野に言ってきた。
「ね、マネージャーの月野さんに、誕生日プレゼント、ねだってもいい?」
「ああ、いいよ。なにが欲しいんだ?」
「月野さんのマンションへ行って、ケーキでお祝いして欲しい」
「……それだけでいいのか?」
はっきり言って、ひなたはもうしょっちゅう月野のマンションの部屋へ泊まっているので、今更感がある。
「そうだよ。明日は休日だけど、昼から仕事が入っているでしょ? 月野さんの部屋へ泊まれば、少しでも長く寝坊ができるもん」
「分かったよ。……で、もう一つのほうのプレゼントはなにがいいんだ?」
「それはまだもう少しとっておく」
ひなたはそう言ってなにやら含み笑いをする。
「今日の十二時過ぎたら無効にするぞ」
月野が少し意地悪っぽく言ってやると、
「シンデレラじゃないのにー」
ひなたはそう呟いて、拗ねた。
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