44 / 55

第44話

「……なんでも?」 「うん。なんでも」 「それはちょっと、すぐには承諾しにくいな。おまえ、めちゃくちゃなこと言いださないか?」  月野が難色を示すと、ひなたは首を傾げて聞き返してきた。 「めちゃくちゃなことって……?」 「……熱湯風呂に入れとか、女装してみせろとか、言いださないか? おまえ、ひなた」 「そんなこと言わないよ。……でも待てよ。月野さんの女装は見てみたいかも」  ひなたはキラキラと目を輝かせる。 「きっと綺麗だと思う。月野さんの女装姿って」 「……おまえの言うこと、なんでも聞くっていうプレゼントは却下だな」 「あー、うそうそ。そんなムチャなこと言わないから。月野さんが本当に嫌なことは断っていいから。ね、できる範囲で構わないから、オレの言うことなんでも聞いて」  ひなたは拝むようにして、月野にそのプレゼントをねだってくる。 「しかたないな。本当にできる範囲でだぞ?」 「うんっ」  ひなたは満面の笑みを浮かべてうなずいた。 「それじゃさっそく一つお願いしていい?」 「……ああ」  月野は少々身構えて答えた。 「あのね、オレの作った料理を食べて欲しいんだ」 「え?」 「オレがここで泊るときって大体デリバリーか、月野さんが簡単なものを作ってくれるか、でしょ? 一度オレの手料理をごちそうしたかったんだよねー」 「でも、おまえの誕生日なのに……」  月野が少々戸惑っていると、ひなたはソファから立ち上がりながら言った。 「とにかくオレ、月野さんに手料理食べてもらいたいの。いいでしょ?」  そのままダイニングまで行くと、テーブルの椅子にかけてあった青いエプロンをつけ、冷蔵庫を物色し始める。

ともだちにシェアしよう!