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第45話

「メニューは肉じゃがと卵焼きと酢の物とお味噌汁……うーん、ちょっとしょぼいかな。スーパー行ってなにか買ってこようかなー」 「いいよ。オレ、肉じゃが好きだし。そのメニューで充分だよ、ひなた」  月野が微笑みながら言うと、ひなたはくすぐったそうに微笑みを返してきた。 「ケーキもあるしね。じゃ、作り始めるねー」  ひなたは両親を事故で亡くしてから、ずっと自炊をしていたらしく、テキパキと料理を作り上げていく。  見ているあいだにダイニングのテーブルにおいしそうな料理が並んだ。 「いただきます」  二人揃って言ってから、月野はまず肉じゃがを食べた。 「おいしい……!」  そう声をあげると、やや緊張した面持ちで月野の様子を見守っていたひなたが、安堵の表情を浮かべる。 「良かったー」 「ひなたは料理の才能もあるんだな。味付けがすごく上手だ」 「朝比奈家直伝の味付け。お母さんが料理好きな人だったから、いろいろなレシピを書いたノートを残しておいてくれたんだ」 「そうか……」 「あー、そんなにしんみりしないで。オレ、あのレシピノートに今日ほど感謝したことないんだから。それこそ肉じゃがのようなおふくろの味から、ちょっと贅沢なごちそうまでいろいろ載ってるんだよー」  ひなたは屈託なく笑う。  こういうところ、ひなたはその華奢でか弱げな見た目と違い、とても強い。 「あ、ねえ、ところで月野さんの誕生日っていつなの?」 「オレは八月の三日、暑い頃だよ」 「月野さんの誕生日には、うんっと豪華なごちそうつくってあげるね」 「豪華なごちそうもうれしいけど、この肉じゃがは外せないな。ほんとおいしい」 「うれしい」  ひなたは顔をほころばせて、えへへと笑った。

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