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第52話
真っ赤になっているひなたを愛おしげに見つめながら、月野は内心苦笑していた。
……オレの決意や理性っていうのは本当に軟弱なものだな。
体を繋ぐことはやめておこうと思っていたはずだったのに……。
ひなたの一途な誘惑に勝てなかった……いや、自分の気持ちにセーブをかけるのが無理になってしまったと言ったほうが正しいな。
どちらにしろオレは、この一途な少年のことを一生離せないんだろうな……。
ひなたへの激しい恋慕の思いが自分でも少し怖いけれども。
月野はそっと上半身を起こした。
「月野さん?」
「ちょっと喉渇いたから、水とって来るよ。ひなたも飲むだろ?」
「うん」
月野はベッドから降りると、パジャマのズボンを穿き、シャツを羽織ると、寝室を出た。
キッチンで冷蔵庫からミネラルウオーターをとったあと、月野はリビングで、サイドボードの引き出しを開け、中から小さな紙袋を取り出した。
寝室に戻ると、ひなたに見られないように紙袋をサイドテーブルの下へ隠す。
「お待たせ、ひなた」
「あ、おかえりー」
ひなたはそう言い、痛みに少し顔をしかめながら上半身を起こそうとする。
月野はそれをとめると、
「おまえは寝てろ。オレが飲ませてやるから」
ベッドに腰かけ、ミネラルウオーターを二口ほど口に含んだ。
そして、ゆっくりとひなたに顔を近づけ、口移しで飲ませた。
ひなたは小さく喉を鳴らして水を飲むと、更にねだったきた。
「ん……、おいしい……。もっと欲しい、月野さん……」
「ああ」
月野は再びミネラルウオーターを口に含むと、ひなたに口移しで飲ませてやり、今度は舌を一緒に侵入させた。
ひなたが月野の舌をキュッと吸ってくるのが気持ちいい。
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