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第54話

 月野は紙袋の中から、今度は青いビロードの箱を出した。  そして、今まで『戒め』としてずっと左手の薬指にはめていた指輪を外し、サイドテーブルの上に置く。  不思議そうな顔で、月野を見ているひなたに、青いビロードの箱を開けてみせた。 「月野さん……」  そこに入っているのは、ひなたとお揃いの指輪だった。 「ひなた、オレの指にはめてくれるか?」  そう言うと、ようやくとまったばかりのひなたの涙が、またあふれだした。  体に負担をかけさせたくないので、横になったままのひなたに、指輪をはめてもらった。  さっきと同じように震える手で、ひなたは月野の左手の薬指に指輪をはめてくれ、そのあと手の甲にキスを贈ってくれた。 「ありがとう、ひなた」  体を屈めて、ひなたの柔らかな唇へキスをすると、彼は強く抱きついてきた。  ひなたに引き寄せられ、月野はベッドへと倒れこむ。 「月野さん……オレ、すごく幸せ……ありがとう……」  そのまま二人は、しばらくの間お互いの体温を感じ合い、鼓動を確かめ合うように寄り添っていた。

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