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第96話
お互いに髪の毛を乾かし、テレビを見たりとまったり過ごしていれば時間はもう深夜に近い時間。
くぁ、と欠伸をすればもう寝ようか、と声をかけられる。
歯を磨き、明日の準備をして寝室へ向かう。
住むようになってからも同じベッドで寝ている。布団さえ貰えれば下で寝ると言ったのだが「じゃあベッドダブルに変えよう!」と言われ理解する前にベッドはダブルになりまだ同じベッドで寝る事となっている。
お互いベッドに入り、大きめの薄い掛け布団をかける。
お腹が冷えてしまわないように。
「結構肉ついてきたね、良かった」
「体重も前よりは増えた、気もします」
「うんうん、綺月はもう少し太っててもいいと思うよ。元々細いのもあるんだろうけど」
「…頑張ります」
「無理して健康になろうとか、思わなくても大丈夫。ゆっくりでいいから」
「……黒木さんは、その、」
「ん?」
「もっと…太ってた方が、抱き、ごこちとか……良かったり、するんですか…?」
確かに、元からご飯を食べる様な人間じゃなかったのもあるし太りにくい体質もあるんだろうけど、腕とか腹の薄さを見ると本当に細いんだな、と感じてしまう。
女子より細い、骨と皮に近いこの身体じゃ良くないんじゃないか、と不安になってしまうのだ。
「…なぁに、不安になっちゃった?」
暑いだろうに、黒木さんは俺の体をぎゅっ、と抱きしめる。
頭をゆるゆると撫でられ、心がほぐれていく。
「健康面ではもっと太った方がいいと思うけど、抱き心地にこだわりはないよ。俺は綺月が太ってようと痩せてようと好きだよ」
「そ、んな」
「そんな深く考えなくていいんだよ、大丈夫、大丈夫。」
額にちゅ、とキスを落とされ、思わず顔を上げる。目尻、頬へと落とされ、唇にも触れる。触れるだけのバードキスを降らし、不安を振り払うように繰り返す。
「不安とれた?」
「ん、はい…」
「よしよし、ちゃんと言えるようになって偉いね〜」
なんだか小さい子と同等の扱いをされてるようでちょっと悔しいが、これも進歩なのだろう。
ゆるゆると、瞼が降りてくる。そろそろ睡魔が限界を迎えてきているのだろう。
「おやすみ、綺月。」
黒木さんの優しい声を最後に、俺は眠りの底へ沈んでいった。
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