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第3話

先生を好きになったのは、入学して間もない頃。 元々口数は少ない方で、友達もいない。 それに、もうその頃には沢山の痣があったため、厚着をしていた。 ある日、廊下を歩いている時先輩の横を通ろうとしたら静電気ができてしまいバチっと音がした。 「いって………おいお前、何すんだよ」 「え……あ、すいませ、」 「うわめちゃくちゃ痺れたんだけど。慰謝料」 「い、今お金持ってなくて」 「はぁ?腑抜けた事言ってんじゃねぇぞ!」 「っ」 怖い。怒鳴られるのも、攻撃的な視線を向けられるのも。 全て父親を思い出してしまう。 「あ〜君、何してんの!」 「あ?んだよ」 突如俺の目の前に現れた、黒い髪の毛の人。スーツを着てるのを見て、先生なんだと分かった。 「何何〜何があったの?後輩虐めちゃ駄目でしょ」 「こいつがつっかかってきて静電気起こしやがったんだよ」 「静電気なんて自然現象でしょ、そんくらいで怒るなよ」 「とにかく、俺はこいつに話してるんだよどけよ」 「どきません。一応俺教師だからね!?扱いもっと丁寧に!」 先輩と対等に話をして、なんとかその場は収まった。 助けてもらったお礼をしなければ、と思ったけど足がすくんで動けない。 「君、月山君だよね?大丈夫?」 「あ、はい……」 「彼もいい子なんだけどちょっと気性が荒いだけだから。 許してやって?」 「………」 その時の先生の笑顔は、今まで見た事がない程にキラキラしてた。 母親は気づいたらいなくて、毎日父親に殴られて笑顔なんて見た事が無かった。 温かい。胸のあたりがじんわりと温まる、優しい笑顔だった。 それから先生の事をずっと見てきた。 叶わない恋だと分かっていても、目は追ってしまう。 どうか、想うことだけは許して下さい。 この気持ちは、伝える事は無いから。

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