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第4話

「ただいま……」 重たい家の扉を開け、誰もいない空間へ呟く。 (良かった、まだ父さんは帰ってきてない) 今ここに父さんがいたら、即座に殴られていただろう。 拒否権は無い、ただひたすら蹴られ、殴られ罵倒される。 多分母親も父親から暴力を受けていたのだろう。 だから俺を置いて一人で逃げた。 そんな事をするなら、いっそ殺してほしいとさえ思ったことがあった。 「逃げようかな………」 このままこの家にいても、いい事なんてひとつもない。 どうせお金は沢山ある。数日間ぐらいはホテルで泊まることも可能なはず。 自分の部屋に行き通帳を取り出す。バックにはとりあえず何着か服を入れ、充電器、必要なものを詰め込んだ。 (いつ帰ってくるか分からない、早く出て行こう) 階段を降りて、靴を履く。 丁度その時、外から声がした。 「ーーーー……で、なかなか………」 「っ!?」 背筋が凍るような感覚。 父さんが、帰ってきた。 まずいまずいまずいまずい。早く、早く逃げなきゃ。 靴を履いたままリビングへ逃げ、窓の鍵を開けて外へ出る。 そっと閉めて、しゃがみ込み息を吸う。 (なんで、いつもならもう少し遅いはず………) しかも一人では無い。同僚の人を連れてきたらしい。 「おい、綺月ー、いないのか」 「玄関開いてたんだからいるはずなんだろ」 「あぁ〜早くヤりてぇな、最近嫁が冷たくて溜まってんだよ」 「まぁ待てよ、どこかにはいるはずなんだからな」 父さんは、俺を売ろうとしたらしい。 血が冷たくなるような感覚がして、目眩がした。 あのままドアを開けていたらどうなっていただろう。 自分の命の危機に心臓の鼓動が早くなる。 (とにかく、逃げよう)

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