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第7話
背筋がぞわっ、とした。まるですれすれに氷の柱が通ったように血が冷たくなる。
それ以上に、援交という言葉に顔が赤くなってしまった。
「っ、しません!」
「大丈夫だって、ちゃんと優しくするからさ。」
「は、離してください!警察呼びますよ!?」
「君だってこんな時間に歩いてるんだから補導されるぞ?
家出してきたんでしょ?」
「っ………」
俺の手首を掴む男性の力は強かった。力の無い俺には振り解けず、嫌悪感で吐きそうになる。
確かに、通報されたら家に戻されあの男達に売られる。
そんなのは御免だ。
だけど、ここで引くのも絶対に嫌だ。
「そうそう大人しくしてればいいんだよ。
ほら、行こうか………
「すいません」
もう駄目か、と思いかけたその時。
聞こえたのはあの優しい好きな人の声。
幻聴かと思った。似た人の声かと思った。
後ろを振り返ると、そこには先生が男性の肩を掴んで立っていた。
「その子はうちの生徒なんです。警察には黙っておきますので、その手を話していただけないでしょうか」
「はぁ?いや、俺この子に誘われただけなんだと?」
(こいつ、嘘ついて………)
「ちが、先生……っ」
信じないで。
俺はそんな事しないから、先生だけが好きだから。
耐えきれなくなった涙がこぼれ落ちそうになる。
「この子はそんな事をするような子じゃない。
怯えている手を引っ張っているのは貴方でしょう、どこが誘われているのでしょうか」
「…………っ」
先生は、俺の事を信じてくれた。
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