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第14話

「はぁ……っ、は、はぁ………」 「月山、月山?」 目を開くと、俺をのぞき込む先生の顔。 気づいたら床にいて、寝ている間に落ちたらしい。 「せん、せ………」 「あぁ良かった……凄いうなされてたけど、大丈……っ」 先生の言葉を遮って、首裏に手を回す。ぎゅっと抱きつけば、人の感触がする。 怖い。苦しくて辛い、悪夢。 身体の感覚が戻ってこなくて、ガクガクと震え始めた。 寂しい、人の温もりが欲しい。 今だけ、今だけ先生の温もりが欲しい。 「よしよし、怖い夢でも見た?」 「………」 「大丈夫、先生がいるよ。先生が傍にいるから安心して」 「……すいま、せ」 「謝らなくていいよ。誰だって怖い夢は見るんだから。 一人の時って辛いよね、誰にも頼れなくて辛い時って、寂しいよね。 今は俺がいる、辛くなったらこうやって抱きしめてあげるから」 背中に回された手は温かくて、優しい手つきで撫でてくれた。 拒絶なんてしない、受け止めてくれた。 「………ぅ”、〜〜〜っ」 俺は今日、何回泣けば気が済むんだろう。 明日目が腫れて開かないかもしれない。 でも、そんな事はどうでもいいくらい凄く泣きたくなって。 今まで溜め込んでいたもの全部、吐き出したくて。 先生の肩を濡らし、嗚咽を零す。 それでも先生はずっと俺の背中をさすってくれて、抱きしめてくれてた。 そう言えば、先生一回だけ下の名前を呼んでくれた気がしたけど、気のせいかな。 「すいません……肩、濡らしちゃって」 「いいのいいの、泣きたい時は泣けばいいんだよ」 先生にまた迷惑かけてしまった。本当に申し訳ない。 「よし、じゃあ寝るか」 「……じゃあ、俺は床で…」 「何言ってんの、一緒のベットだよ」 「え」 「今日は一緒に寝る。今俺が決めたから」 「でも、狭いんじゃ…」 「月山は小さいから大丈夫でしょ。ほらベットに行く」 半ば強引に決められ、強引にベットに寝かされる。 先生が俺を抱き締めるように入ってきて、心臓がドキドキする。 平常心、平常心と唱え目を瞑る。 次は先生がいるから大丈夫。そう思って、また夢の中へ沈んでいく。

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