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第15話

月山綺月は、どこか影がある。 黒木綾は、彼を見てそう思った。 伏し目がちな瞳、陽に当たると透けるように白い白髪。 他の男子よりも細い身体、いつも半袖の中に着ている長袖のアンダーシャツ。 どこか近寄り難い、儚い子だと思っていた。 「………」 「…すぅー………」 今、腕の中で寝ているのはその儚い月山。 最初は同じ方向を向いて寝ていたのだが、寝返りを打って向かい合う状態になっている。 少しだけ赤くなった目元が、泣いた事を証明していた。 怖い夢を見たと言っていた。どんな夢かは分からない、月山にとって恐怖の夢。 目を覚ました時、あの子の瞳には俺は映っていなかった。 黒く塗り潰された、光のない瞳に、俺は背筋が凍るのを感じた。 こうして寝顔を見ると、まだあどけない少年の様な顔してる。 大人びた様な表情をしているが、まだ中身は幼い様だ。 頬をする、と指先で撫でる。 くすぐったそうに顔をしかめ、また穏やかな表情に戻る。 (親御さんにも連絡してないんだけど大丈夫かな……てか学校にこれバレたらやばいし) 高校生といえど連絡無しに家に連れ込んだなんてバレたら停職なんて済まないだろう。 でも、何故月山は連絡をあれほどに拒否したのか? 「う………」 すると、月山は苦しそうな表情を浮かべはじめた。 また悪夢を見ているのか。 「止めて…お願いだからっ、止めて………」 「月山…」 「助けて………誰か、助けて………」 「………大丈夫、俺が助けてあげる。だから、もう泣くな」 震え始めた小さな身体を抱きしめ、冷たい手をぎゅっ、と握る。 今、助けを求めるのなら。 俺はいくらでも手を伸ばす。だから、一人で抱え込むな。 震えは止まり、また規則正しい寝息が聞こえた。 (ん……?) 安堵したその時、服の隙間から痣を見つけた。 色は変色し、最近出来た傷である事が分かる。 でも、どうしてそんな所に? (………寝始めたのに起こすのも悪いな) この事は、明日聞こう。 腕の中に眠る小動物を抱え、綾は眠りについた。

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