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第16話

「んぅ、ん…………」 身体が温かい。いつもなら冷たく、寒いはずなのに。 何かに包まれているみたい。 重い瞼をこじ開け、目をこする。段々はっきりしていく視界に人が映った。 目の前で寝ているのは、先生だった。規則正しい寝息を立て、俺の手をぎゅっと握っている。 あれ、なんで俺先生と寝てるんだっけ……? なんで先生、俺の手握ってるんだろう。 「せんせ、起きてください」 「んぅ〜………」 「起きないと、寝坊しますよ…?」 「えっマジ!?……あぁ、まだ時間ある……て、あれ、月山おはよう…」 「おはようございます」 ガバッと起きて目覚まし時計を確認する。先生、毎回寝坊してるのか。 いつもサラサラに整った髪の毛が寝癖で跳ねたりしてて少しだけ可愛いと思った。 「どう?寝れた?」 「はい、いつもよりよく寝れました」 いつもなら何回か起きたりするのだがずっと寝てられた。 隣に先生がいてくれたからかな、温かくて気持ち良かった。 「俺は先に出ちゃうけど……って、ここから学校の行き方分からないか」 「道さえ教えて貰えれば大丈夫です」 「いや、一人にさせるのはちょっと不安だから今日は一緒に登校しよう」 「でもそれじゃ…」 「こーら」 「ぁうっ?」 何故かデコピンをされた。ちょっと痛い。 「なんでもかんでも断ろうとしない。甘えられる時にはちゃんと甘えないと」 「……はい」 「よし」 頭を撫でられ、鼓動が早くなる。顔も熱くなってきて見られないようにそっぽを向く。 何故、こんなにも先生は優しいんだ。 先生だから?生徒には全員優しいの? 俺だけに、優しい? あるはずもない事に期待をしてしまい、胸のあたりがザワつく。 駄目だ、余計な事を考えちゃいけない。 先生への気持ちを大きくしちゃいけないんだ。

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