17 / 96

第17話

朝は奥にあった葱を見つけたので細かく刻んで卵とご飯を使い炒飯にする。 味噌汁は昨日の残りだけど、朝ご飯としてはいい出来だ。 「っはぁ〜〜めちゃくちゃ美味しい……コンビニ弁当よりはるかに美味しい」 「そんな凝った事はしてないんですけど、美味しいなら良かったです」 俺はあまりご飯を食べない方なので少なめにして先生の方を多めにしたのだが、俺より早く食べ終わりそう。 美味しそうに食べてもらえて、作った方も嬉しくなる。 二人共食べ終わり、食器を洗う。 とりあえず着替えなければ、と服を手に取るもここで着替えたら傷がバレてしまう。 「あの、先生……あっちで着替えていいですか」 「ん?なんかあった?」 「その……あまり身体を見られたくなくて」 「………そういえば、昨日肩のところの痣見ちゃったんだけど」 「っ」 「それ、何で出来た痣か聞いていい?あっ別に答えたく無かったら答えなくていいよ。 ただ、いじめとかだったら聞く必要があるなって」 身体から血の気が一気に引いたのを感じる。 痣を見られたなんて、思いもしなかった。 なんて言い訳しよう、なんて誤魔化そう。 いっそこのまま言ってしまう?先生に全てを打ち明ける? 嫌ダメだ何度も言ってるだろ先生には絶対言えない。 「こ、この前高い所の本取ろうとしたら落ちてきてっ、肩に当たっちゃったんですよ……結構重くて」 「あぁ〜、それは痛いね……湿布とか貼らなくても大丈夫?」 「すぐ治るので大丈夫です」 手汗がじわじわと滲んでくる。心なしか汗も出てきそう。 先生に嘘を吐く事が、こんなにも苦しいなんて。 罪悪感に押し潰されそうで、怖い。 先生は優しいから。そうやって心配してくれるんだ。 平等に与えられる優しさで俺は勘違いしそうになる。 勘違いをする前に、この想いを切らなければ。 先生に別れを告げなければ。 「じゃあ俺部屋に行ってるから着替えたら呼んで」 「はい」 先生は自室へと入り、リビングに俺一人となる。 どこに居ても、辛い、苦しい。 この想いは一体、どこにぶつけたらいいんだ。

ともだちにシェアしよう!