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第20話

放課後、俺は自分の家に帰ろうと重たい足を運んだ。 今日は数学の無い日だったから先生にも会わなかった。 でも先生の事だから学校で呼び出すなんてことはしないだろう。 (本当なら呼び出してくれた方が今はマシ) 時間稼ぎ、なんて考えるけど止めた。 家に着いて、震える手で玄関を開く。 そこには父さんの靴があって、背筋が冷たくなった。 あれ、今日は休みの日?なんでいるの? またか、殴られるのか。痛いなぁ、吐かないといいな。 靴を脱いで、ギシ、ギシ、と音の鳴る廊下を歩き、リビングの扉に手をかける。 寒い、震えが止まらない。 扉を開けば、ソファに座る父さんがいた。 テーブルの上にはビールの缶、吸殻が溜まった灰皿。 荒れていたのが分かる。 「帰ったのか」 「……ただいま」 震える唇で、掠れた声を出す。 もう動けない。今から何をされるのか、分かってしまっているから。 ゆっくりと立ち上がり、ズルズルと俺の方へ歩いてくる。 俺の目の前に立つと、鳩尾を殴られた。 「ぐっ……げほ…っ、が、」 「勝手にほっつき歩いてんじゃねぇぞ!あぁん!?」 「げぼっ、ぅ”、ごめ、ん”なざ……っ」 「謝って済むもんじゃねぇよ!」 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。 倒れた俺を踏み潰す様に足で蹴る。肩、胸、腹、殴れる所はなんでも殴る。 顔を殴らないのは家庭内暴力を悟られない為。 胃にあったものがせり上がってきて吐きそう。酸っぱい胃液が喉元まできてる。 でも、今吐いたところで父さんにとっては更に逆上させることになってしまう。 父さんは一通り蹴ると、煙草に火をつけた。 あぁ、嫌だ嫌だ嫌だ痛い熱い熱い 「いや、だ……っ、い”、あ”あ”ぁ”あ”!!」 「逃げたあの女にそっくりだ、顔も声も全部」 手の甲に押しつけられ、悲鳴を上げる。パッとはすぐに離れない、痛みと熱さが永遠と続く地獄。 涙が思わず零れた。でも、それを誰も拭いてくれやしない。 「ったく、今度は勝手に逃げんじゃねぇぞ。次やったらタダじゃおかねぇ」

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