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第30話

生徒に、キスをした。 半分はあやす為、もう半分は、興味本位だったのかもしれない。 まだ精神的に幼いところがあって、尚且つ儚い印象を与える姿。 そんなアンバランスで、涙を流す姿は美しかった。 離れまいと必死に抱きつき、恐怖に怯える。 それすら可愛いと思ってしまったのは異常だろうか。 (唇、柔らかかったな……) 目を少しだけ見開いて、硬直してて少し笑いそうになった。 反応からして、まだキスはした事が無いのだろうか。 だとしたら、俺が初めてになってしまったな。 普通だったら、こんな事しない。 泊めることも、特別優しくするのも、キスするのも。 何かが違う、どこか違う。 気になる、性格も行動一つ一つもそのあざも。 気にかけてしまう。 寝る時、後ろから抱きしめてみた。身体がぴくんっと跳ね、大人しく腕の中に収まる。 ほんのりと紅く染まった首筋に、胸がざわつくのを感じた。 擦り寄れば、緊張しているのかそれともまだキスを気にしているのか肌はしっとりとしていた。 少し肌寒いくらいの夏の夜、月山の体温は丁度いい。 大学にいた時、それなりに付き合いはした。 でもそれとは違う、また別の胸のざわつき。 (月山の事を、どう思っているのか) 同情?それとも、本気? いずれにせよ、この気持ちははっきりしなければいけない気がする。

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