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第31話
先生の家に転がり込んで、一週間が経った。
父さんに連絡するのが怖くて、スマホの電源は落としてある。
学校から帰る時も、先生と一緒に帰るようにした。
先生を待つ時間も苦にはならなかったし、一人で帰るよりはよっぽどマシだった。
でも、あの父さんの事だ。
きっと、何か仕掛けて来るはず。
そして俺も、先生から離れようとして離れられない。
間違えたら先生が危ないのに、離れられないなんて都合の良い言葉だ。
そういえば、あの夜から先生が俺に触れてくる回数が増えた気もする。
手に触れたり、頭を撫でる回数が増えたり………たわいのない事だが毎回胸の鼓動で張り裂けそうになる。
(先生は何がしたいんだろう……?)
これは、特別な事なのだろうか?
俺にだけしてくれる行為なのだろうか?
意識、されてるのかな?
いやいやいや、そんなはずない。
だって、先生は俺の事を好きになんてならないし。
俺が好きなだけで、一方的な想いだけで先生は何も気づかないだろうから。
放課後の教室に一人、先生を待つために残る。
外からは野球部のかけ声が聞こえる。
風が吹いて、カーテンがなびく。
少しだけ、眠ろうか。
どうせまだ先生は仕事が終わらない。
机に突っ伏して目を閉じる。
ほら、段々睡魔がよってきた。
「………綾、先生」
今度、名前付きで呼んでみたらどんな反応するかな。
そんな事を思って、意識を手放した。
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