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第34話
「やっ…」
手で顔を隠そうとするけど、先生に手を掴まれて覆えない。
「駄目、綺麗な顔してんだから隠さないで? 」
「っ……み、耳元で囁くの、駄目ですっ」
「月山って耳弱いの?」
「知りませ……っ、も、もう離してください!」
吸い込まれそうな瞳から目を離したくても離せない。
駄目って脳が警報を出しても、触れられている手は震えて動かせない。
「……月山」
「せ、んせ………っ」
また、顔が近づいてきて。
抗えない何かが、身体を縛りつけて動かしてくれない。
瞬間的に目を瞑る。それと同時に触れる、二度目の唇の感触。
前回よりも長くて、温かく柔らかい感触がじんわりと伝わる。
どうしよう、息を止めてるから苦しい。
手首を掴んでいた手はいつの間にか手のひらを包み込むように握っていた。
「んぅ………ぷはっ」
やっとで離れた唇から空気が入ってくる。
はぁ、はぁと息を吸い込み、涙で視界はぼやけた。
(なんで、キスしたの……?)
何も無い、怯えてもない。俺は何も困ってないのにどうして?
このキスに、なんという意味があるの?
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