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第44話

「なっ………ぁ………」 「元気そうだなぁ、綺月」 心臓の音がバクバクと不規則になり始める。 ひゅ、ひゅっと呼吸も上手くできない、手脚が震え始めた。 学校が終わり、先生は会議で長引くからと言われ早めに帰って御飯を作ろうとした矢先の事だった。 突然腕を掴まれ、路地裏に連れていかれたのだ。 目の前にいる男は、余裕そうな笑みを浮かべて。 なんで、なんでここにいるの。 どうして父さんが目の前にいるの? やだ、捕まったらお終いだ。早く早く、早く逃げなきゃ。 でも、そんな反抗も出来ないまま腕を掴まれてしまった。 「よくもまぁこんなに逃げれたな。電源も切ってるもんだから探すのに手こずっちまった」 「は、離して、くださ………っ」 「いいのか?お前の大切な〝先生〟を傷つけても」 「……………っ」 その一言で俺を黙らすには、充分の脅しで。 血が冷凍されたように冷たくなった。 「随分と可愛がってもらったみてぇだな。仲良く歩いて笑顔振りまいて。 そんなに先生に気に入られたかったのか」 「ちが………」 「でもな、無理なんだよ。お前には」 「ぐっ…」 腕を痛い程に強く握られ、前髪をぐしゃりと掴むと目を合わせるように上に上げた。 濁りきった瞳には、苦痛で歪む自分の顔。 「そんな汚ぇ身体で、誰が愛してくれるってんだ? 醜いお前を受け止めてくれるやつなんて何処にもいねぇよ」 「っ………………」

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