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第50話
「俺は、月山がいい」
その一言には、どれだけの想いが込められているのだろう。
その一言は、俺じゃなくて先生の隣にいるべきの人に取っておけばいいのにとすら悠長に思えた。
もっと俺なんかより綺麗で、優しくて、気遣いのできるいい人が見つかるでしょうに。
「なんで、」
なんで、俺なんかに固執するの。
閉まった玄関の前でへたり込む。頬は塩分を含んだ透明な血の涙で濡れている。
立ち上がろうとしても力が入らなくて。
先生を助ける為に、守る為に俺は先生から離れてるのに。
これじゃ、意味が無くなっちゃうよ。
今すぐにでも手を伸ばしたい。先生の手を掴んで、深い海から引き上げてほしい。
沢山話を聞いてほしい、痛かった事辛かった事全部叫びたい。
あの大きな温かい手で撫でて欲しい、背中をさすって欲しい。
そして、「辛かったね」「痛かったね」「俺がいるから、もう大丈夫だよ」って、全部を肯定して抱きしめて欲しい。
あの温もりをしってしまったから、また縋り付きたくなってしまう。
俺は、どうしたらいいの。
守る為に身を捨てるか、それでも手を差し出してくれてる愛しい人の手を取るか。
答えは、出なかった。
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