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第53話

「…………………」 「月山……?目が覚めたか!?」 ここは、どこ?なんで、先生がいるの? 心配そうな表情をした先生、真っ白な部屋に腕からチューブが繋がれた点滴。 さっきまで見ていた世界とは反対の色。 喋ろうと口を開くと、何かが取り付けられている。 酸素マスクだろうか。 「俺の事分かるか?」 「せんせ……」 「っ、良かった………もう目を覚まさないんじゃないかと思った」 力の入らない手をぎゅっと握って涙ぐむ先生。 悲しい顔をさせてしまったと、罪悪感が生まれる。 「お前が気を失ったあと、父親は焦って救急車を呼んだらしい。 それでお前の身体の痣を見た救急隊員があとから警察も呼んだんだ」 つまり、動揺した父親によって全てバレたという訳か。 馬鹿だなぁと思うし、良かったとも思う。 「ちなみにその警察に俺の友人がいて、連絡をもらったんだ。 自殺未遂をしたって聞いた時は肝が冷えたぞ」 「ごめ、なさ…」 「いや、謝るな。俺があの時意地でもお前を助けてれば良かった。 話してくれるのを待とうなんて……」 「……泣かないで、せんせ……」 「……お前は、俺の事守ろうとしてくれたんだよな。 自分の身を痣だらけにする代わりに、俺の事を守ってくれたんだよな。 辛かったよな。本当にごめんな」 頭を撫でる手が懐かしい。少し冷たいけど、優しさは変わらなくて。 結局、先生にまた頼ってしまって。 離れる理由も、無くなった。

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