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第54話

「失礼するよ」 病室に警察官の人が入ってきた。制帽の隙間から見える髪色は深緑色で瞳はキラキラした青い目だった。 知らない人に少し過敏になっているせいか、繋がれていた手をぎゅっと握る。 先生は気づいてくれて大丈夫、俺の友人だからと言ってくれた。 「容態はどうだ」 「まだぼんやりしてるとこはあるけど大丈夫っぽい。 時間が経てば身体の方は治るって医者が言ってた」 「そうか。……月山綺月君、こんにちわ。 俺は雪影真悠(ゆきかげまゆ)で、先生のお友達なんだ」 「真悠、さん………?」 「そう、真悠。まずは君に伝えなきゃいけない事がある。 一つはお父さんの件についてだ」 「っ、……っ」 呼吸が止まりそう。身体が一瞬跳ねて、震える。 忘れかけていた記憶がどんどん思い出されていく。 「月山、落ち着いて。大丈夫だから」 「せんせっ、俺……」 「大丈夫。俺が隣にいるから、だから安心して」 「うん……」 先生が両手で包み込んでくれて、震えが段々止まっていく。 大丈夫、大丈夫。何も怖くない。 「ごめんね、いきなり話しちゃって……嫌になったら嫌って言ってね、別の機会に話すから」 「大丈夫、です」 「……君のお父さんは会社でも横領とか悪い事をしていてね、君に暴力を奮っていた件も合わせて逮捕された。 君には今後近づかない様令状も出す。 これからは何も痛い事なんて無いんだよ」 「……ほんとう、ですか?」 「あぁ、本当だ。でも、なんで暴力の件は綾に言わなかったんだ?責めてるわけじゃないから、言いたくなかったら言わなくてもいい」 「………父さんに、先生が俺を家に連れ込んでるって、学校に連絡するって、言ったんです。 教師が生徒に手を出してるって言ったら、もう会えないだろうって、脅されたんです。 別に殴られるのは痛いけど、先生の為なら、大丈夫かなって………」 先生の為なら、俺は死んだって構わない。 そう思えて、ずっと黙ってた。 実際、守るどころか自分は本当に死にかけたけど。

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