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第58話
「………多分言葉の意味分かってないだろうなぁ」
眠りについた、言葉を送った相手の髪の毛を撫でる。
服の上からでも分かる肉付きの少なさに目を細め、もう片方の手で小さな手を握る。
(俺があの時、強引にでも連れ出してやれば………)
言葉を待とうだなんて思うのが間違いだったんだ。
ドアをぶち破って、呆気にとられる君の腕を掴んで。
包み込めば良かった話なのに。
(しかも俺が人質とか………
結局、月山に守られてたんだな、俺)
守るどころか、この小さな身体に守られてただなんて笑えない。
全部背負わせてしまっていた。
俺の為に、こんなにも身体を傷つけさせてしまった。
本当は、俺が傍にいる資格なんてないのかもしれない。
もっと自由に、幸せになれる方法があるのかもしれない。
でも
「もう離してはやれないかもな……」
少しばかり大人気ないけど、気づいてしまった以上お前を手放してやれない。
この小さな手を、ずっと握っていたい。
「おやすみ、綺月」
その白い肌にキスを落とした。
俺が気持ちを伝えるのは、精神が安定してから。
それまで、待ってくれないか。
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