58 / 96
第59話
あれから一週間、先生は仕事が終わると毎日来てくれた。
学校の事とか、その日あった出来事をいっぱい話してくれて退屈はしなかった。
たまに真悠さんが来て、手続きや色々な話をしていった。
その時は先生も一緒で俺が分からないとこは教えてくれたりした。
「あぁ、今日は一つ……話があるんだ」
「?なんでしょうか」
「君のお母さんについてなんだが……君のお母さん、月山恵海(つきやまめぐみ)さんは今も生きている」
「………!」
「今はかなり遠い所に住んでいるようだ。………再婚もしていた」
「………そうですか」
「連絡を取ることは出来るが、どうする?」
「いえ……大丈夫です。家を出ていってからだいぶ経つし、今が平穏なら壊しちゃいけないので」
(母さん、元気なら良かった)
再婚したんだ。あとから聞いたけど、子供も二人いるんだって。
幸せになれて良かったね。
そしたら、俺はもう他人だから関わっちゃいけない。
「真悠さん」
「何かな?」
「色々、ありがとうございます」
「…………どういたしまして」
何故か真悠さんは頭を掻いて目を逸らした。
俺なんか間違えた事言ったかな?
「綾、お前あんないい子どこで手篭めにしたんだよ」
「いや人聞き悪い事言うな馬鹿手篭めになんてしてねぇよ」
「月山君、綺麗だな。俺にくれないか?」
「その言葉謹んでお返しする。月山はやらん」
「ははっ、ま、せいぜい頑張れよ。もたもたしてっとどこかの誰かに取られるぜ?」
「生憎、手放す気は無いんで。どこかの緑頭にやる予定は無いね」
ともだちにシェアしよう!