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第60話
今日は休日、といっても俺は変わらず病院生活なのでそこまで意味は無い。
ただ先生が今日は昼間からいるってぐらい。
「月山、林檎食べる?」
「はい」
俺の部屋は一人部屋で広々としている。すぐ横には窓があって、温かい日差しが入りこんでくる。
季節はもう秋になっただろうか。常に長袖の何かを着ていたから分からなくなってしまった。
現に今も中にアンダーシャツを着ている。
痣もまだ残っているし、魅せたくない。
「月山〜」
「?……むぐっ」
「うさぎ〜美味しい?」
「…おいひいです」
丁寧にうさぎの形に剥かれた林檎を口に放り込まれ、咀嚼する。
みずみずしく中心部の蜜が甘い。
先生が林檎を剥けることにも驚いた。
「先生って林檎剥けたんですね」
「んな!?り、林檎ぐらい剥けるよ!梨だって剥けるぞ!?」
「じゃあじゃがいもは?」
「…………」
しょんぼりした子犬のような顔をして縮こまる先生を見て、ぷっと吹いてしまう。
意外とできるようでできないとこが可愛いなって思った。
「………ねぇ、月山。トランプしない?」
「いいですよ、ババ抜きですか?」
「うん。それで、勝った方の言う事聞くってのはどう?」
「……いいでしょう」
勝った方の言う事を聞く、か。
何を聞いてもらおう、勉強を教えてもらうとか?
とにかく、勝たないとお願いは聞いてもらえない。
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