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第77話

背中を一定のリズムであやされ、心を穏やかに。 先生の顔が見えなくてどんな表情をしているのか分からないけど、でも多分、優しい顔をしてる気がした。 「確かにね、大学生の頃とか女の子と付き合ったりもしたよ。 でもあんまーり長続きはしなかったかな」 「………」 「なんでだと思う?」 「え、えと………分かんないです」 「友達と恋人の違いが感じられない、だってさ。 よくある話だよね、接し方が同じで誰にも平等で話して。 俺は特別扱いしたつもりだった。プレゼントもあげたし好きだって言った。 なんで私の事特別扱いしてくれないのとか言われた時正直ウザかったね」 「………」 「教師になってから、生徒にも告白されたりもした。 でも一応歳の差あるし世間の目もあるからね、全部断ってた。 それで今度は、こういうんだよ。」 『私にだけ特別扱いしてくれてたのに』 「恋とは盲目とは言ったもんだよね。俺は普通に接してたはずなのに、彼女らにはどう見えてたのか。 それから、恋なんてまっぴらと思ってた」 話を聞いてて、黒木さんは黒木さんなりに辛かったんだと分かった。 特別にしてたのに平等と言われ、平等に接してたつもりなのに特別にされ。

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