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違う、そうじゃない。(下)*
「せ、先生っ」
舟而は何も言わず、そのまま太腿の内側へ唇を滑らせる。
「はあん、先生……」
「腰紐に掴まっていなさい」
白帆の脚を抱きながら、反対の足の膝から太腿の内側へも唇を這わせる。
「あっ、それより上は……っ」
「上は、何だい?」
舟而は下帯のさらりとした布地へも唇を這わせる。すぐに硬さに触れて、その形を舌で辿った。
じわり、と舌の湿り気と熱が伝わって、白帆は天井を振り仰いだ。さらに顔を傾けて唇で形を挟まれて、白帆は甘い声を上げる。
「はあ、ンっ。せんせ……っ」
白帆の真珠色の内股がわななくのを、舟而はあやすように撫でるくせに、その片脚は自分の肩に担いでしまって、下帯に舌を這わせ続ける。白帆は手首を縛られたまま腰紐に縋るように掴まって、なすすべなく刺激に耐えた。
白い下帯は舟而の唾液に濡れて、白帆の肌の色と形を明らかにする。
「すっかり透けてしまったよ、白帆。こんな形にさせて、いやらしい子だ」
「あんっ、先生……っ」
片脚を舟而の肩に掛けた状態では、身を捩ることもできず、白帆は拘束された手首で腰紐を掴んだまま、赤い唇を薄く開けて呼吸を早めた。
舟而は白帆の細帯を解く。同時に寝間着の合わせ目は割れ、左右の褄先 が畳の上に垂れた。
「あっ」
白帆は顔を背ける。その耳もうなじも朱で掃いたように赤く染まっていた。
さらに舟而は下帯も解き、白帆の反応越しに背けられた顔を見上げる。視線に気付いて白帆は薄目を開け、舟而と目が合って、すぐに目を閉じた。
「僕を見て、白帆」
舟而は白帆の片膝の裏を持ったまま立ち上がり、背けている顔を優しい笑顔で覗き込む癖に、捻りつけるような荒々しさで唇を奪う。
白帆は口を抉じ開けられ、舌を絡め取られて、口の端から飲み込み切れない唾液を零しつつ、舌をのばして懸命に応戦した。
「んっ、む……、んん……っ」
舟而は片脚だけで立つ白帆の身体を自分の腕の中へしっかり抱いて、寝間着の内側へ手を滑り込ませ、真珠色の肌を舟而の温もりで撫でまわす。
背中を撫で回し、脇腹を撫で上げ、親指の腹で胸の粒を転がすと、白帆は堪りかねて口を外して仰け反った。
「ああっ!」
舟而は突き出された胸に唇を寄せ、そっと口に含んで舌先で嬲る。
「せんせ……っ、ああっ。ン……、ンンっ」
さらには白帆の高ぶりも握り込まれ、容赦なく擦られて、舟而の寝間着へ飛沫を掛けた。
「はあんっ、んんっ」
白帆は掴んでいた腰紐から手が滑り、崩れ落ちる。舟而はその身体を受け止めながら、そのまま一緒に畳の上へ座り込んだ。
「僕の上へおいで」
「はい」
白帆は束ねられた手を胸の前にして、舟而と額同士をくっつけながら頷いた。
舟而は畳の上に安座して、白帆と唇を微笑ませたまま接吻を繰り返しつつ、自らの硬さを確かなものにしていく。
「手伝ってやるから、ここへ来なさい」
香油を塗りつけた杭の上へ、白帆は束ねた手首を胸にゆっくり腰を沈める。
「ああ、先生……、ああ、ああ」
白帆は泣きそうな顔をしながら舟而を飲み込み、全て飲み込むと舟而の肩へ額を擦りつけた。
「痛くないかい?」
こくこくと頷く白帆の髪を撫で、頬へ柔らかく接吻をする。
「自分で動けるかい」
白帆はまたこくんと頷いて、俯いたまま小さく腰を振り始めた。
「ん、んっ。……先生、お願いがございます」
白帆は小さく腰を揺らしながら、舟而に拘束された手首を差し出した。
「この手の紐を解いてくださいまし」
「痛くなってしまったかい」
「いいえ。ただ自由に動かせないのが、もどかしいんです」
舟而は片頬を上げて笑った。
「お前さん、ようやく気付いたのかい。緊縛というのは、そういうものなんだよ」
白帆は顎を引き、赤い唇を尖らせた。
「それなら、緊縛は楽しくありません……。後生です、解いてくださいまし」
「どうしようかな」
舟而は笑うと、白帆の腰を掴んで激しく揺すぶった。
「あああああっ、先生、後生です。後生ですからっ」
再度覗き込んだ白帆の目尻には、ぽつっと涙が溜まっている。
「もう、縄で遊びたいとか、縛ってほしいなんて、危なっかしいことは言わないって約束できるかい」
「はい、約束いたします。もう縛ってほしいなんて言いません」
白帆が約束の証明として舟而の唇へ接吻すると、舟而は微笑んで白帆の手首から腰紐を解いてやった。
「ずっと、こうしとうございました」
白帆は自由になった手を、舟而の首に絡げてしがみついてきた。
舟而は表情を緩め、髪を撫で、背中を抱いて、耳に唇を触れさせる。
「ねぇ、白帆。どうせ縛るなら、こういう縛り方のほうが僕たちらしいと思うけど、どうだい」
舟而は深く結ばれている二人の腰へぐるりと腰紐を回して結んだ。
「ええ、素敵です。先生とずっと一緒。一蓮托生ですね」
白帆は微笑み、細い手で結び目を撫で、優しい声で同意した。
「白帆。僕はずっとお前さんのものだし、お前さんは僕のものだよ」
「はい」
舟而は白帆の身体を抱き締めると、その肩に頬擦りし、改めて深く己を埋めて、白帆の身体を穿った。
二人は抱き合ったまま、何度も接吻を交わし、繋ぎ目を存分に揺さぶって快楽に没頭した。
「あっ、あっ、あっ、あっ……。先生、もう。気を遣ってしまいそうです……」
穿つリズムと同じくして白帆は赤い唇の隙間から嬌声が零れるのを聞きながら、舟而は歯を食いしばって自分たちを高みへ押し上げた。
「あっ、せんせ……っ、はああんっ!」
「白帆っ! ああっ」
白帆の意識は宙に舞い、舟而は思いを貫いて最後の一滴まで白帆の中へ送り込んで、二人は一緒に熱く甘い快楽を全身で味わった。
「先生、こんなんでいかがですかね?」
書斎前の北向きの庭に、職人の手で頑丈な木枠が建てられた。
「どんな大嵐でも倒れねぇってくらい、しっかりしときやした。支えも充分でさ!」
「ありがとう」
本を買うか、白帆に物を買ってやるくらいしか使い道のない小遣いを職人に支払って、次に現れたのは日比だった。
「この結び方なら、まず外れるということはありません。外すときは縄を鋸で引いてください」
はしごを上ったり、下りたりしながら、木枠に縄で木の台をぶら下げると、白帆が招かれた。
「座ってよろしいんですか?」
白帆はぶら下がって揺れる木の台へ腰掛け、左右の縄を掴んで地面を蹴った。
「わぁい、楽しい!」
ぶらんこを漕いで満面の笑みを浮かべる姿に、舟而も日比も笑顔を誘われる。
「ぶらんことは、考えましたね」
「うん、まぁ。白帆が喜んでくれることは何かと考え続けていれば、ときどきはこういう案も浮かぶよ」
鈴が転がるような笑い声とともに揺れる白帆の姿を見て、舟而は弓型に目を細めた。
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