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第119話*

 稜而に押し出されるようにして放出された遥の白濁は、勢いよく窓ガラスにまで飛んだ。 「ああっ、はあっ……、はあんっ」 稜而の硬さを内包しながら、遥は窓に向かって目を閉じ、内壁をうごめかせていた。 「すごい飛んだな。あとで拭かなきゃ」 遥の頬にキスをして、稜而はあらためて己を根元まで含ませ、遥の背中に上体を重ねて、遥の耳にキスをしながら話す。 「遥、観覧車が見えるよ」 昼下がりの港には、初秋の光がまんべんなく降り注ぎ、船やさざ波、大きな吊り橋、橋の上を行き交う車、立ち並ぶ建物などが、穏やかに光っていた。  観覧車も、ゆっくり動いて太陽の光を跳ね返している。 「ん……。明日、帰る前に乗りたい」 「いいよ。観覧車の中でも、少しだけエッチなことしようか?」 囁きながら、一度だけ軽く突き上げた。 「あんっ! できるの、そんなこと?」 「できるよ。遥がいい子にしているなら」 「してみたい」 「わかった、周りの迷惑にならない程度に楽しもう」 「どうやって?」 「内緒」 遥の頬に、ちゅっと音を立てて口づけると、また数回腰を揺らした。 「あ、あ、あ……んっ」 「遥、せっかく高層階の部屋にいるんだから、たくさん景色を見て」 「うん」 「ほら、空を飛行機が横切っていくのも見える」  遥に景色を見せながら、稜而は遥のワイシャツの裾から手を忍び込ませ、指先で胸の粒を探りあてた。 「ひゃっ!」 「遥は敏感だから、すぐにここが硬くなる。ワイシャツに形が浮くのは恥ずかしいから、ベストは必ず着なくちゃダメだよ。わかる? ほら、こんなにこりこりと硬く、ぷっくり腫らして……。いやらしい……」 ベストの下で動かすスペースに制約があるなか、僅かに指先だけを動かして、遥の乳首を愛撫する。 「あっ、あっ、ン……、稜而……っ」 「気持ちいい、遥? すごくいい顔してるよ。ほら、窓ガラスにも映ってる」 眉間に力がこもり、眉尻がぐっと下がって、だらしなく顎が垂れている顔をガラスの中に見つけ、遥はそっと顔を逸らした。 「もっとよく見て。俺の好きな顔だよ。ねぇ、もっと気持ちよくしてあげるから……」 稜而は遥のベストとワイシャツのボタンを外すと、二つの乳首を同時に摘んでねじり、さらに後孔を突き上げた。 「ひゃあんっ! ああっ、ああっ、あっ、あっ、稜而っ! ああんっ!」 自分の顔がガラスに映るのも忘れて、遥は悩ましげな顔を晒す。 「ああ、俺しか知らない遥の顔だ……」  稜而の声も上擦って、突き上げる速度が増した。 「稜而っ、稜而、いっちゃう……っ」 「ダメ」 稜而はぴたりと動きを止め、遥は息を呑む。 「ヤダ、止めないで。止めないで、稜而……」 「ダメだよ、そんなにすぐにいこうとするなんて。遥はいやらしすぎて、四月から一人で大学に行かせるのが、本当に心配だ」 「やっ、やらしーのは、稜而と二人きりのときだけなのんっ」 遥はドレンチェリーのように真っ赤な唇を尖らせる。 「そう思ってるのは、遥だけかも。さっき、試験会場から一緒に出てきた男、遥が車に乗ってからも、ずっと遥のことを見ていた。遥が俺にキスをしたら目を丸くして、顔も耳も真っ赤にして、駅のほうへ早足に行ってしまったけど」 「え? ワタヌキくん……」 「ふうん、ワタヌキっていうんだ? 俺たちがこうやって深く愛し合ってる姿まで、しっかり見せつければよかった。その辺を歩いていて、こちらを見上げたりしないかな? つなぎ目まで、全部見せてあげるのに」 稜而は遥の片脚を担ぎ上げると、大きく開脚した脚の間へ己を強く打ち込んだ。 「あんっ! 稜而、ヤキモチ妬きなのんっ!」 「俺がヤキモチを妬くのは、遥に関することだけ。全体から見ればパーセンテージは少ないから、ヤキモチ妬きなんかじゃないよ」 「へ・り・く・つ! ……あっ、んんッ」 「遥だって、美人を見るたび、男も女も人も犬も問わず、態度が悪くなるじゃないか。昨日も庭で、ジョンと『むきーっ!』って喧嘩してただろう?」 「あんっ! だってジョンが『あたしは、稜而が高校生の頃からずーっと仲良しなのよ』って自慢してきたのん!」 「どうやって、犬とそんな複雑な会話をしてるんだ……」 「遥ちゃんの、稜而が高校生の頃に着てたダッフルコートを見て、匂いを嗅いで、懐かしいわ、ふふんっ! って顔したのん!」 「俺は遥のものって決まっているんだから、喧嘩なんかしなくていいのに」 遥の脚を下ろし、背後からきゅっと抱き締めて、バラ色の頬にキスをした。 「遥ちゃんも、稜而のものなのん」  振り返って稜而の唇にキスをすると、遥の中にある稜而の姿が逞しくなった。 「稜而、愛し合いたいのん」 ふわふわした白い尻を揺らしてねだると、稜而はうんうんと頷いた。 「愛してるよ、遥。……大好き過ぎて、自分で自分に戸惑う」 「遥ちゃんも、稜而のこといっぱい愛してるわ」 稜而は少しずつ律動を早め、二人は摩擦から湧き上がる甘く苦しい熱に身をゆだねた。 「あっ、んんッ……、稜而っ、稜而っ」 「遥、遥……っ」 二人はそれぞれ目を閉じ、愛し合っている場所に意識を向けて、波の到来を心待ちにし始めた。  擦れ合う度にむず痒いような快楽が湧き、その快楽は腹に蓄積されて、快楽の虜になった稜而は遥の腰を抱いて、本能の赴くままに疾走する。 「ああ、遥っ、遥っ!」 「稜而……っ、ひゃあっ、あ、あ、もう……」 窓枠を掴んで悲鳴をあげると、遥はいっそう激しく突き上げられた。 「俺も、もう……。ああ、先にいって、遥」  がくがくと揺さぶられ、穿たれて、遥は高層ビルの窓から外に向かって突き飛ばされるような浮遊感と、脳の回線が焼き切れそうな強い快感を得た。 「あっ、あああああっ! 稜而ーっ!」  全身に快感が駆け巡って、遥の粘膜が収縮し、締めつけられた稜而もまた浮遊感を感じながら、遥への愛を放出した。 「遥っ! 愛してる……っ!」

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