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第122話*

 夜の大観覧車は七色のライトがきらめき、そこへ向かって歩く稜而と遥の顔もカラフルに照らされる。 「♪ちっちゃなころからヘンテコで、じゅうごでこうこうにねんせい、たいくのじゅぎょうはいやだけど、すうがくとくいな、ちゃっちゃっ、はるかちゃんー! あーあー、らぶらぶできて、うれしいのー、りょうじとはるかは、ふうふなのー! なかよし、なかよし、なかよしよー、ピカピカハートの、ちゃっちゃっ、ふたりなのー♪」 稜而がつないだ手を高く上げると、遥はその手の下でくるりとターンした。 「楽しいのーん! たいくは嫌いだけど、るんたったは好きよー!」  お気に入りのムートンブーツで地面を蹴って、るんたった、るんたったと飛び跳ねる。 「それはよかった」 稜而はうんうんと頷き、それから遥の顔をのぞき込んだ。 「土曜日の夜が一番、観覧車の待ち時間が長いらしいんだ。疲れたら、俺に寄りかかって休んで」 「あーん、稜而と二人きりのときの渋滞と、待ち時間が長いのは、大歓迎なのよー! ずっと一緒にいられるわー!」  ロマンチックな夜景を楽しもうとするカップルが集まり、つづら折りになっている列の最後尾に遥を立たせると、稜而は背後から遥の身体に両腕を回した。 「遥って、いつもいい匂いがする」 少しずつ動く人の波に合わせて歩きながら、遥のうなじに鼻を押しつける。 「稜而がシャンプーしてくれた匂いなのん」 「違うよ。シャンプーやボディソープが違っても、同じ匂いがするもの。いろんな花を集めたみたいないい匂い。ずっと嗅いでいたい。夜、遥が寝てるときも、実はこっそり嗅いでるんだけど。怒る?」 「やーん。怒んないけど、遥ちゃんってば、お口を開けてがーがー寝るくせがあるらしいから、恥ずかしいのん」 「そう? 寝てる遥もすごく可愛いよ。キスしたくなる、というか、してる」 稜而は甘い声で遥の耳を、指先でドレンチェリー色の唇をくすぐる。  遥は首をすくめて笑い、疑似餌におびき寄せられる魚のように、ぱくっと稜而の指を咥えた。舌先で指の腹を舐めると稜而が笑う。 「そんなことして、違うこと思い出すんじゃない?」 甘ったるい囁きに、遥は肩をふるわせ、稜而の指から口を離して笑った。 「思い出してるのは稜而なのん。えっちっちー」 「俺? 俺はわざわざ思い出さないよ。いつも考えてるから」  遥は手を叩いて笑い、その笑顔に稜而は素早くキスをした。  観覧車が回るのと同じスピードで列は進み、係員の誘導に従ってゴンドラに乗り込んだ。 「お空に向かってしゅっぱーつ!」 遥は手を叩いて喜ぶ。  稜而は隣に座る遥の姿に目を細め、そのままするりと腰へ手を回した。 「観覧車は好き?」 「好きなのん!」 「俺のことは?」 「大好きなのん!」 「キスして」  遥の顔を下からのぞき込むように顔を突き出し、遥がその唇へキスすると、今度は稜而から遥へキスをした。何度か唇を触れあわせ、唇を食むようなキスをして、薄く開いた遥の唇の間へするりと舌を滑り込ませる。 「ん……」 遥が甘い声を上げると、稜而は口を離して囁いた。 「ねぇ、いたずらするから、俺の首に掴まって」 「はいなのん」  遥が素直に両腕を首に絡めると、稜而はポケットに忍ばせてきたワセリンを指にとり、遥のスキニージーンズの隙間から手を入れた。  尻の狭間を滑り、窄まりを撫でる。 「んっ!」 「冷たかった?」 「ううん」 「感じた?」 遥は小さく頷いた。 「今、もっと気持ちよくしてあげるから」  頷く遥の頬にキスをして、稜而は手を引き抜き、再び手を入れた。するすると尻の谷間を滑り、窄まりを確認すると、遥を抱きしめながら、ぐっと何かを押し込む。  遥は指とは違う感触に、絡めている腕を解いて稜而の顔を見た。 「どうかな? 気に入ってくれるといいんだけど」 小さなリモコンを見せ、スイッチを入れる。同時に遥の胎内で小さな振動が始まった。稜而がボタンを押すと、ぐるぐると内壁を擦る動きが加わる。 「あっ、ひゃあっ!」 遥は思わず稜而に抱きついた。 「嬉しい。遥から抱きついてくれた」 稜而は目を弓型に細め、遥を抱き締める。 「夜景がきれいだよ。見て」 「あっ、あっ……」 「観覧車の中って、天辺以外は、ほかの人から見えるんだよ。ほら、顔を上げて、ちゃんと夜景を見て」 腰に抱きつく遥の頭を撫で、爽やかな笑顔でたしなめる。 「ん……んん……」 「きれいな夜景だね、遥」 遥はムートンブーツの踵で床を蹴りながら、稜而の胸に顔を埋め、いやいやと首を振った。 「刺激が足りなくて、おねだり? もっと刺激が強くないと、顔を上げられない?」 遥はまた首を左右に振ったが、稜而はリモコンを操作した。 「ああっ!」 「声が大きい。まだ刺激が足りなくて、おねだりってことかな?」 さらにリモコンを操作されて、遥は稜而の腰にきつくしがみつき、稜而の顔を見上げた。 「助けて。もう……、もう……っ」 遥の顔は赤く、瞳は潤んで、口を開けてはあはあと熱い息を吐いていた。 「こんな場所で、いきたくなっちゃったの? しょうがないな」 稜而は遥をしっかりと自分の腕の中に庇った。 「いいよ、おいで」  ほどなくして遥は、稜而の腕の中で全身を強張らせた。苦悶の表情を浮かべ、弛緩すると同時に、天啓を受けた聖人のように恍惚とした表情を見せて、稜而の腕の中に崩れる。 「遥、いっちゃったね」 稜而は肩で呼吸を繰り返す遥の、ミルクティ色の髪を撫でた。

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