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第128話*

「寒くない?」 上質な陶器のように白く滑らかな裸体を布団で覆われて、遥は笑顔で頷いた。 「別に、いつも通りのセックスをするだけなんだけど」 稜而は一緒に布団に包まり、遥を腕の中へ抱くと、髪に、顔に、たくさんキスをした。  稜而の唇が頬に触れたとき、遥は稜而の顔を見た。 「そういえば実験のとき、ゴキゲンな如月にほっぺにキスされたのん」 遥は両手のこぶしでゴシゴシと頬を擦った。 「嫌だった? 嫌なら、俺から言うけど」 稜而が首を傾げると、遥も一緒に首を傾げた。 「ふうむ。なぜかしらん? 別に嫌じゃなかったのん」 「じゃあ、いいんじゃない? あいつ、一滴も酒を飲まないくせにキス魔なんだ。俺も如月にキスされたことあるよ」 稜而は苦笑した。 「えー? やーん。如月め! 遥ちゃんのほっぺはよくても、遥ちゃんの稜而のほっぺにちゅーはダメなのん。右のほっぺ? 左のほっぺ?」 遥は稜而の左右の頬に何度もキスを繰り返す。稜而は笑いながら返事をした。 「口にもされたことがある」 「あーん、お口もなのー? 如月、ぐぬぬなのん」 ちゅ、ちゅ、と口にもキスを繰り返す遥の背中を撫でて、稜而はとても真面目な顔を作って言った。 「首も、肩も、胸も、腹も、キスされたかも知れない」 「ひゃー! 如月のえっちっちー!」 稜而の言うがまま、布団の中へ潜っていき、全身にキスの上書きをしていく。稜而は布団をめくり、さらに真面目な声を出す。 「ペニスにもキスされたかも!」 「うっそーん! 大事件なのよー! いくらキス魔でも、稜而のおちんちんは、遥ちゃんしかキスしちゃダメなんですのーん!」 遥はまだ項垂れていたペニスを掴み、表も裏も根元も先端もくまなくキスをして、さらには舐めまわし、口に含む。稜而は耐えきれずに腹を震わせ、声を立てて笑い出した。 「遥、可愛い」  布団の中から遥を引き上げて、唾液まみれにしている遥の唇にキスをした。 「愛してるよ、遥」 「遥ちゃんも、稜而のこと、とってもとっても愛してるわー」 唇を重ね、舌を通わせながら、稜而は遥に覆いかぶさる。  ミルクティ色の髪を撫で、額に、頬にキスをして、耳にふわっと息を吹きかけ、外耳の形を舌先で辿り、奥まで舌を差し込んでくすぐる。 「んんーっ、がさごそするのん……」 逃れようとする頭を抱いて、しつこく耳の中を探るうちに、遥の声が変化した。 「ふ、あっ。ン……、稜而……」 「愛してるよ、遥……」 言葉を送り込み、キスで蓋をしてから、舌先で首筋、鎖骨を舐める。  遥の身体が震えるのを唇で感じ取りながら、少しずつ降りていき、胸の粒を含んだ。 「あんっ! 変になっちゃうのん」 稜而は舌先で粒を尖らせ、ひくひくと暴れる身体を押さえつけて、口の中で転がし続ける。 「はっ、ああんっ。ここは弱いのんっ、すぐいきたくなっちゃうの……んっ」 「いいよ、いって」 素早くそれだけ言うと、舌の動きを早めて遥を追い上げた。  しつこく熱せられ、甘い疼きに炙られて、電熱線が焼き切れるように、遥の身体は快感を得た。 「あ、あ、ああん……っ!」  反対の胸も同じようにされて、くったり身体の力が抜けると、稜而の手は遥の窄まりへ触れた。 「あんっ!」  稜而はローションを指にのせ、遥の蕾を円を描くように撫でて解す。  はじめは悩ましげに頭を左右に振っていただけの遥だったが、次第に唇が薄く開かれ、稜而に向かって手が伸ばされた。 「来てなのん、稜而……」 稜而は頷くと、堂々と膝立ちになり、己の高ぶりに仕度を施す様子を見せつけた。  遥はその姿を凝視して、無意識のうちに唇を舐める。  稜而は仕度を終えると、サイドテーブルで充電していたスマホを傍らに置いてから、遥の足を肩に担ぎ上げた。 「いい?」  遥が頷くのを確かめて、ゆっくりと己を押し込む。 「あ、ああ、ああ……っ!」 ずるずるといつまでも挿入が続いて、遥は眉根を寄せる。 「深く入る。ほら、根元まで。よく見える」 稜而はつなぎ目を見下ろしながら、試すように軽い抜き差しをしていた。 「やーん、超、超、ガン見してるのよー!」 「だって、すごく愛しあってるのがわかる。……遥にも見せてあげる」 稜而は交接部をスマホのカメラに数枚収めると、遥に手渡した。  遥は笑いながらスマホを受け取る。そこには赤黒く張り詰めた稜而が遥の蕾を押し広げ、ぴっちりと隙間なく交わっている様子が映っていた。 「やーん! 目玉が勝手に動いて、見ちゃうのよー。遥ちゃんの目玉はえっちっちーなんだわー」 遥は笑いながら指先で画面をスライドしたり、ピンチアウトで拡大したりしながら写真を見る。 「えっちっちーなのは、お互い様。だからこんないやらしいことをしてるんだろ。それとも、遥はセックスなんて見たことも聞いたこともなくて、興味ない?」 「見たことも聞いたこともやったこともいっぱいあって、興味津々なのよー!」 「正直でいい子だね。たくさん気持ちよくしてあげる」 「わーい、してしてなのーん!」 遥は両手を上に上げ、きらきらと振った。  稜而は改めてつなぎ目を見下ろし、自分の視覚も楽しませながら、ゆっくりと抜き差しをした。  根元まで埋めると、遥は満足げなため息をつき、ぎりぎりまで引き抜くと、ミルクティ色の髪を振って稜而を欲しがった。 「稜而、いなくならないで。一緒にいたいのん……」 両手を稜而に向けて伸ばす。稜而はその指先にキスをした。 「俺も。ずっと遥と一緒にいる。誰にも渡さない。遥と愛し合うのは、俺だ」 ぐっと深く押し込んで、身体を揺らした。遥は衝撃に悲鳴を上げ、稜而は足を踏み外さないように息を詰めてから、二人は迫る絶頂に喘ぎ、腰を揺すった。 「あっ、稜而……っ、稜而っ、はあっ、ンン……、あっ、あっ、」 「ああ、遥……、遥っ、遥っ!」 「稜而ーっ、あああああっ!」 遥が全身を強張らせる。その刺激で稜而も背を丸め、咆哮した。稜而の快楽が勢いよく遥の中で放出され、遥は奥底まで突き上げられてさらなる絶頂を味わってから、二人は崩れた。 「ふふっ、くすぐったいのん」 「逃げちゃダメ。遥は俺のもの。証拠写真を撮っておこう」 稜而は遥を背後から抱き締め、赤く火照っている頬と頬をくっつけて、二人の顔の前にスマホを構えるとシャッターボタンを押した。さらに遥の頬にキスをしながらシャッターを切り、遥も振り返って稜而の唇にキスをしてシャッターを切る。 「超、バカップルさんなのよー!」 「バカップル、上等」 稜而は遥の真っ白な首筋に吸いついて、赤い跡をつけた。その跡を指先でくすぐり、満足げに目を細めながら言い聞かせる。 「遥。誰かに指摘されたときは、どれだけ白々しくても、『虫刺され』とか『天ぷら油が跳ねた』って言い張るんだよ、いい?」 「はいなのーん!」  遥はくすくす笑いながら、おりこうさんな返事をした。

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