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第133話*-抜釘術編-
小学校のラジオ体操の音楽に合わせ、ジョンが高らかに歌い、蝉がコーラスを添える朝。
汗ばむ遥の肌をクーラーの冷たい風が撫でていく。
肌触りのいいタオルケットを蓑虫のように巻き付け、爪先はシーツの冷たい場所を探りながら、アラームが鳴るまでの時間を過ごしていると、背中にぬくもりが触れ、タオルケットの合わせ目に手が忍び込んできた。その手は迷わず遥の胸を狙い、指先でまだ柔らかな粒を掘り起こすように撫でる。
「ん……」
稜而の首筋には遥の頬が押しつけられて、稜而が遥の顎にキスをすると、遥は目を閉じたまま後ろ手に稜而の硬い髪を撫でる。
「Mon chenille 、おはよう。よく眠れた?」
耳に触れる唇の音だけで囁かれて、遥は小さく笑う。
「まだ眠いのん……」
「いいよ、寝てて。勝手に触るから」
稜而は囁き、耳にキスして、自分の声を閉じ込めるように舌で舐めた。震える遥の身体をしっかり抱いて、耳の奥まで舌を差し込み、くすぐった。
「んんーっ」
遥は目を閉じたまま、小さく笑って肩をすくめる。稜而は一緒になって口許に笑みを浮かべながら、遥の乳首をそっとつまんでねじりつつ、頬にキスをして、そのまま首筋、肩と唇を押し当てていく。
遥の身体から、少しずつ薄掛けを剥ぎ取って、二の腕、脇腹と唇を這わせて、メロンソーダ色のボクサーブリーフに包まれた尻にキスをする。
キスがつのって頬ずりになり、ついには狭間へ鼻を押しつけながら、左右の手で揉みしだく。布越しでは飽き足りなくなって、下着の裾から両手を入れて撫で回し、ついには下着を引きずり下ろした。
「ふわふわで、最高……っ」
隙間に鼻を埋め、窄まりに舌を這わせる。
「やーん、そんなところ、舐めちゃダメなのーっ!」
後ろ手に、手探りで稜而の頭に触れる遥の手を掴み、強引に舐め続ける。
「嫌なのん。ダメなのん。っ、ああ、やぁんっ!」
遥が本気で怒り出す直前までしつこくして、遥が後ろを振り返る瞬間に飛び退き、仰向けになった遥の上にのしかかる。
「い・や・な・の・んっ!」
バラ色の頬をぷっと膨らませ、ドレンチェリーのように赤い唇を尖らせる。
「ゴメンね」
小首を傾げ、王子様のような笑顔でかわして、素早く遥の左右の頬にキスをした。
「目が覚めちゃったのん」
「これから一週間、いくらでも寝られるから」
いきなり胸の粒を口に含み、遥の口は喘ぎ声で満たされる。
「はあんっ、嘘なのんっ! 痛くてお昼寝なんてできないのよーっ」
「手術の翌日だけだよ。ちょっとの我慢だ。セックスと同じ」
胸の粒は舌先で転がされ、反対側の胸の粒は指でつままれ捏ねられる。全身に甘い痺れが広がって、遥は目を閉じ眉間に皺を寄せて、口を開けた。
「はあっ、はあ……、ああっ」
遥が軽く稜而の肩を押しても、稜而は離れることなく舌を動かし続け、遥は観念して身体を任せた。
「稜而……」
胸の粒をつまんでいないほうの手で、遥の手を探って握ると、遥はその手を握り返し、全身を強張らせた。
「あっ、あっ、ああああっ!」
「いっちゃったね」
稜而は微笑みかけ、さらに反対側の胸の粒も舐めて遥を追い上げると、唾液で濡れた唇をぺろりと舐めた。サイドテーブルから取り出したジェルを指に乗せ、遥の脚の間の窄まりに塗りつけ、撫で回し、すっと指先を埋める。
「ん……っ」
遥は眉根を寄せつつ、稜而の指を受け入れる。
稜而は後孔を愛撫しながら、さらに遥の脚の間で上向いているものを口に含み、舌を這わせ、指を絡めて愛撫した。
「やぁ、ああんっ」
内壁を探られ、膨らみをそっと撫でられ、軽く押されるのと同時に、遥は快感を鋭く吐き出す。
「あああああっ!」
「遥、やらしい」
唇を舐めながらからかわれて、遥はだるい腕で枕を掴み、稜而に向かって投げた。
「エッチなのは稜而なのんっ」
「おっしゃるとおり。否定しないよ。もう遥の中に入りたくて、仕方ないんだ」
稜而は自身の屹立へさばさばと準備を施すと、遥の顔の脇に両手をついて見下ろし、爽やかな笑顔を見せた。
「いーれーて!」
「……いーいーよ……なのん」
遥が枕に真っ赤な頬を押しつけながら答えると、稜而はさっそく遥の片足を肩に担ぎ、先端の照準を合わせて、腰を進めた。
「はあっ、気持ちいい……。遥の中、熱くて柔らかくて、気持ちいい……」
「んっ。……稜而ぃ」
「ああ、腰が勝手に動く。止まらない……っ」
その言葉通り、規則正しいリズムで下腹部を打ちつけ、遥の尻に触れる肌との間でぶつかり合う音が響く。
稜而は目を閉じ、感触を味わっていたが、しばらくすると遥を四つん這いにさせた。
「もう限界。いっていい?」
「ど、どうぞなのん……」
遥は枕を抱えて尻を突き出すと目を閉じ、稜而は遥の腰を掴んで再び己を埋めて、思う存分に突き上げた。
「ああ、遥……。大好きだ。愛してる……。ずっと、ずっと、俺と一緒にいて……」
腰を抱え、すがりつくようにして、稜而は疾走する。
「はっ、ああ……。稜而っ、いっぱいこすれるのん……っ、あっ、ああっ……」
「いっちゃいそう? いいよ、俺も限界」
粘膜を擦り合わせ、湧き上がる灼熱の快感を体内に溜めながら、絶頂だけを目指して激しく腰を振る。
「ああっ、稜而っ、稜而っ、あああああっ!」
遥が先に溜め込んでいた快感をはじけさせ、粘膜に締めつけられて、稜而の腰も鋭い快感が貫いた。
「遥っ、遥っ、はああああっ!」
強く打ち込みながら喘ぎ、細い管から噴き出す快感を遥の最奥で感じた。
「仕事中も遥に会えるなんて、嬉しいな」
シャワールームで遥の髪を洗いながら、稜而は目を細めた。
「そのかわり、遥ちゃんはちょっぴり痛いんだわ」
ぷっと頬を膨らませる遥の耳に、稜而はまたキスをする。
「なるべく痛くないようにするから」
「ヴァージンを口説くエロ親父みたいなのん!」
「優しくする」
「絶対、絶対、優しくしてなのんっ! 稜而だから、信じて手術を受けるんだわーっ!」
遥は両手を握りこぶしにして、降り注ぐシャワーの雨に向かって叫んだ。
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