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第160話*

「全くの想像だけど、あのナースは『白衣の天使』を強要されて、疲れてるんじゃないかしらん? 妻を強要されるみたいに……」 首を傾げた遥の言葉に、玲而は優しく問い掛けた。 「遥ちゃんなら、どんな解決法を提案する?」 玲而の言葉に、稜而は『手厳しいな』と苦笑して前髪を吹き上げる。 「遥ちゃんなら……。遥ちゃんなら、彼とお友達になりますのん!」  遥の返事に玲而は静かに目を見開き、稜而は目を細めた。 *** 「遥ちゃん、またヘンテコを言っちゃったかしらん?」 シャワーブースで足を肩幅に開いて立ちながら、遥は首を傾げる。 「玲は対象と距離を保つことは考えても、距離を詰めることは考えなかったんだろ。精神科医だから、特に患者との距離は気をつけてるはずだ」 稜而は遥の足元に片膝をつき、遥の少し伸び始めた茂みを前に、専用トリマーのスイッチを入れる。 「あらーん。精神科医はお友達も作れませんのん」 遥は怖がる様子もなく、稜而の手を見下ろした。 「仕事とプライベートは別っていうだけだよ。それは俺だって分けてる」 左手でそっと遥の性器を庇いながら、柔らかな肌の上に銀色に光るトリマーの刃を滑らせて、あっという間に全てのアンダーヘアを三ミリほどの長さに整えた。 「ありがとうございますのん」 「どういたしまして」  泡立つバスタブに身を沈め、互いの頭と身体を洗いあいつつ、遥は出会った当初の自分たちを思い出した。 「うふーん。プライベートを分けてる稜而先生と、患者だった遥ちゃんは、あんなこともこんなこともしちゃったのん! プールのお水でキラキラした稜而とのちゅーは忘れないんだわ!」 顎の下で泡のついた両手を組み、濡れた髪をゆっくりと左右に振る。 「遥は特別。……ねぇ、遥。もっと特別なことしようよ」 熱っぽい吐息とともに囁かれて、遥は元気よく頷き、バスタブの栓を抜いた。 「おーいえー! 本日も稜而のスペシャリテでスっっっウィートなドルチェは遥ちゃんなのん!」  全身から泡を洗い流し、バスローブを羽織ると、遥が特別な引き出しを引っ掻き回す。 「今日のラッピングはどれがいいかしらーん?」  稜而も一緒になって引き出しを覗き込み、黒いシースルーのキャミソールとTバックのセットを掴んだ。 「わーお!」  シースルーのキャミソールは左右の胸に縦に割れ目があってリボンで結んで閉じてあり、Tバックの後ろは大粒のパールビーズが連なっていた。 「着せてあげる」 頭からキャミソールをかぶせ、足元に跪く。シンデレラに靴を履かせるように遥の左右の足にショーツを通して引き上げた。 「お尻にビーズが食い込んでるから、動くたびに気持ちがいいと思うよ。引き攣れないように、ローションを塗ってあげる」  稜而は目の前に跪いたまま、遥の魅惑的な谷間にローションを塗り、大粒のビーズを添わせると、チュールレースに透ける遥の雄蕊にキスをした。 「あんっ!」 遥の震える腰を掴み、舌を押し付けて舐め上げる。レースのザラつきと、舌の滑りがぞわりと遥を刺激した。 「ひゃあん!」 逃げようとしても許されず、何度も何度も舐められて、遥の雄蕊は熱を持ち膨らんでゆく。小さな布を押し上げると、後ろのビーズがぐっと後孔に食い込んだ。 「ああっ!」 「ここ、気持ちいい?」 さらに稜而の手でぐりぐりとねじ込まれ、遥は身体を震わせる。 「歩いて、遥。ベッドまで歩いて」 そういうくせに稜而は遥の雄蕊を広げた舌でゆっくりと舐め続けた。遥の身体に熱が広がる。 「あ……、あん……っ」 「歩けないと、このまま大きな鏡の前でセックスしちゃうよ?」 ドレッシングルームの壁に固定された大きな姿見を指さされた。  薄い布をまとい、頬を赤らめた自分の姿が目に入る。立ち上がった稜而が隣でその肩を抱いて微笑む。 「ねぇ、遥。エッチな下着姿とか、感じて声を出してる姿とか、俺と遥が繋がってる姿とか、全部鏡に映して見ながらしない?」 いつもは別の場所にある、ゆったりした一人がけのソファが鏡の前に置かれている。遥が横目で稜而を見ると、稜而は遥に口づけて、ゆっくりその目を閉じさせた。

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