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第173話*
稜而はベッド上に座り、自分の屹立を薄膜で覆うとジェルを塗りつけ、向かい合う形で遥を座らせる。
遥は、稜而の硬さに押し広げられながら、少しずつ腰を沈めた。稜而との接地面から全身に心地よい痺れが広がる。
そのまま快楽に呑まれてゆらゆらと腰を揺らめかせていたら、稜而が言った。
「あとでおもちゃを買いに行こう」
「ん、おもちゃ……?」
「そう。遥が一人で気持ちよくなるためのおもちゃ」
とんっとんっと突き上げられて、遥の表情は悩ましげに変化する。
「あっ、ん。四月まで、まだ、時間、あるのん……っ」
「その前に使い方を覚えて、一人でできるようにならなきゃ。遥の中で動くおもちゃがいい? 動かなくて遥が自分で好きなように動けるおもちゃがいい?」
小刻みに揺らされて遥は鼻に抜けるような刺激に腰が砕け、稜而に抱きついて耐えながら答える。
「おもちゃより、稜而がいいのん」
「それはそうかも知れないけど、我慢できないと思うな。……俺も自分用に買うよ」
「稜而も?!」
遥の目は急に輝き始め、稜而の肩に掴まって積極的に腰を動かした。
「うわっ、あっ、遥っ!」
「あああんっ、稜而がするところ見るのんっ! おもちゃ使ってあはーんってするところ見るのーん!」
遥が腰を振れば振るほど、稜而の雄蕊が遥の内壁の膨らみを擦り上げて、遥は湧き上がる快感を味わった。
「っん、きもち……っ」
きゅうっと内壁を収縮させて、稜而の形をリアルに感じる。稜而はその締めつけに目を閉じて堪えた。
「上手だね、遥。もっともっと自分が気持ちよくなるように動いて」
甘えた声と同時に左右の親指の腹で胸の粒を捏ねられる。胸から全身へ快感が広がって、遥は顎を上げた。
「ああっん、りょーじ……」
同時に腰をくねらせる速度も早くなり、遥の全身に温かな湯のような快感が巡る。
「可愛いけど、この程度の刺激じゃいけなくない? もっとエッチに動いてよ。俺も一緒に連れていって」
稜而は遥を突き上げて揺さぶり、遥は湧き上がる快感に泣きそうになりながら腰を振って、互いに高みを求めて息を詰め、ほぼ同時に弾けた。
「♪りょーじさん、りょーじさん、おこしにつけたおさいふでっ、はるかにおもちゃをくださいなっ♪」
新宿の街を飛び跳ねて歩く遥と手を繋ぎ、稜而はうんうんと頷き、続きを歌った。
「♪あーげましょう、あげましょう。これからひとりであそぶのに、つかうのならば、あげましょう♪」
「もちろん使うんだわー! 稜而も替え歌上手なのん」
建物の形がわからないほどに看板がデコレーションされた歌舞伎町で、昼間から開いている店は多くない。
まだ回収されないゴミ袋を避けながら、間口の狭い店に足を踏み入れた。
「よう、ナメクジ。白菜連れか」
膝の上の三毛猫を撫でていた店主が電子タバコの煙を吐きながら笑う。
「キャベツといもむしなのん。今日はおひとり様用のプレジャーグッズがほしいのよー」
遥は飾り気のない棚にずらりと並ぶおもちゃを見た。力強さを強調する黒いボディのドリルマシン、女性が口を開けて待つオナホール、三所責めを実現する三股のピンクローター。手錠、鞭、ロウソク。
「相互鑑賞か」
「それもするけど、キャベツが四月から山奥の温泉地に行っちゃうのん。週末は会いに行くけど、離れ離れなんだわー! だから浮気より気持ちのいいおもちゃが必要なのん」
「なるほど。浮気より気持ちいいものなら、白菜へのおすすめは『ねっとろりんバキューム三号』。七号まで出ている人気シリーズだけど、三号が一番ハードで刺激が強い。実際の女とハメる予定がないならハードさに慣れても大丈夫だろう。内側の細かい溝にゾリゾリ擦られる感触と、先端で待ち構える柔らかい突起が亀頭を刺激する感触は評判がいい。使う前に本体とローションのボトルをお湯につけておくと使い心地が向上する」
店長は棚の前を歩き回り、『ねっとろりんバキューム三号』を稜而に手渡す。
「なるほど」
パッケージには顔を赤くして蕩けきった表情のショタっ子が描かれていた。
「本体は透明で中身が透けて見えて、視覚効果も抜群」
「おーいえー!」
「ナメクジのほうは、一人で楽しむなら吸盤付きかな。床や壁に突き立てて使うといい」
「スティックは持ってるけど、吸盤付きは初めてなのん」
「鏡に突き立ててやるところを白菜に見せてやれ」
「鏡っ?! あーん、エロいのーん♡」
遥がミルクティー色の髪を振る隣で、稜而も自分の唇をちらりと舐めた。
「あとは完全防水のアナル専用ローター。スマホと同期して距離に関係なく操作できる。離れ離れになっても、ナメクジは白菜の思いのまま」
「それはいい」
稜而は唇を舐め、遥は両手のこぶしを顎の下にあてて肩を揺らした。
「乳首開発はどう? これはクリップ型のローター。カップ型と違って服を着てもあまり目立たないし、そっちのアナル用ローターと一緒に遠隔操作できる。なんなら今、充電してやろうか?」
「ふおおおおお、遥ちゃん、充電終わるまで皆で飲むお茶を淹れるんだわ!」
遥は勝手知ったるバックヤードへ入って行った。
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