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第186話*
遥はぺろりと自分の唇を舐め、稜而の興奮へ手を掛けた。手のひらに包んで何度か刺激してから、大きく口を開けて先端を含む。
遥の口の中で稜而の興奮はさらに高まり、口の中を満たすように大きく膨らみ、さらには硬くなっていく。遥が上目遣いに様子を伺うと、稜而は遥の目を熱っぽく潤んだ目で見つめ返した。
「ひもひぃい?」
稜而の硬直をしゃぶったまま訊くと、稜而は眩しそうに目を細め、遥の頬を撫でた。
「ああ、気持ちいい。……遥も」
促されて逆さまになり、稜而の顔を跨いだ。
「やっぱり遥の尻は最高だ」
稜而は発酵したパン生地のような遥の尻を両手で撫でまわし、その間にある窄まりへ触れる。遥の尻がひくんと小さく震えて、稜而は片頬を上げた。
枕元のローションを手にとって指先に垂らし、手の熱で温めてからそっと塗りつけて撫でる。硬い蕾も少しずつほぐれて、稜而は指を差し入れた。
「あんっ」
「痛くない?」
確認しながらも容赦せずに押し進め、指を増やしてクルミ大の膨らみを愛撫する。
遥は内臓への直接の刺激に耐えきれず、稜而の屹立にしがみつくようにしながら、ぱたぱたと稜而の胸へ吐精した。
「ひゃあんっ!」
「ああ、指に絡みついてひくひくしてる。俺もここに入りたいな」
稜而から差し出されたパッケージを受け取って、遥は自分の唾液で濡れた稜而の興奮を薄膜で覆い、稜而はローションを塗り足した。
「遥ちゃんがライドしてあげるのん」
遥は稜而の腰を跨ぐと自分の唇をぺろりと舐めて、ゆっくり腰を落とした。
稜而の先端が遥の身体を押し広げる。内壁と屹立が擦れる快感に二人は目を閉じて耐え、根元まで飲み込んで息をついた。
「お腹いっぱいなのん」
遥が照れたように笑うと、稜而もふっと小さく笑い、照れくさそうに前髪を吹き上げた。
稜而は遥の腰へ手を添え揺らして催促をする。
「動いて。我慢できない」
「おーいえーなのん」
稜而の催促に応えてゆるゆる腰を動かすと、擦れ合う場所が源泉のように快楽を生み出して、遥は熱に浮かされながら腰を振る速度を上げていく。
膝を大きく開き、呼吸を荒らげ、快楽を追って疾走する。稜而も遥の痴態を堪能しながら与えられる刺激に目を眇め、我慢できずに自らも突き上げた。
互いの粘膜が擦れ合い、空気と混ざり合って淫靡な音を立てるのを聞きながら、ふたりは呼吸を早めていった。
全身を血液と共に快感が巡ってゆく。何度味わっても飽きることのない心地よさ、子どもの頃、親に禁止されていたロリポップキャンディのように舌が赤く染まる暴力的な甘い快感。
遥はミルクティ色の巻き髪を切なげに振って、絶頂を追い求めた。内壁に振り回されて稜而も顎を上げ、快感の内圧が高まるのを待つ。
「はあっ、りょーじっ」
高波が打ち寄せるように遥がはじけ、きゅうっと切なげに締まる身体に稜而も攫われた。
「はるかっ!」
汗にまみれた身体を重ねて呼吸を整え、少し寝たと思ったらもうアラーム時計が音を立てた。
「くれぐれも安全運転で」
「だいじょぶなのん。お任せあれなんだわ」
ジャケットを助手席に、スラックスとベスト姿で運転席へ乗り込むと、遥は朝靄の残る道へ赤いステーションワゴンを走らせた。
日曜日の早朝の高速道路は空いていて、予定より早く大学に着いた。日除けのポケットに突っ込んである教職員専用のカードを使ってゲートを通過し、如月に与えられたスペースへ車を突っ込んで、学内のコンビニで買い物をしてからエレベーターで研究室へ上がる。
合鍵でドアを開けると、ソファには寝袋にくるまった如月がいて、遥は脇をすり抜け机の上に座って窓を開け、脚の間の引き出しから煙草とライターを取り出した。
「もうそんな時間か」
「中央道も首都高もガラガラだったのん。こんなに空いてたなら、あと一回くらい愛しあってこれたんだわ」
「ずいぶん粗末な内容なんだな」
如月は寝袋の中で開かない目を無理に開けて腕時計を睨む。
「愛しあってる二人は、僅かな時間も惜しんで高まり合うことができるのん。もちろんたっぷり時間を掛けて愛しあうことだって。自由自在なんだわ」
口の端に引っ掛けた煙草に火をつけて吸いつけ、窓に向かって紫煙を吐いた。
「そんなに自由自在なら、精液サンプル出せるか?」
「今?」
「入学式のあとでいい」
「んー。試験管一本ならいけるかなぁ。先に言ってくれれば、昨日、稜而に飲ませないでおいたのん」
「悪いな。ちょっと思いつきで調べたいことができた。量はそんなにいらないが、新鮮なものが欲しい。凍結保護剤を使いたくないんだ」
「真っ赤な顔して賢者タイムのまま、暗い部屋の中から先生に試験管を渡すのね」
「俺の目の前、顕微鏡の隣だ、バカ」
「わーお。コンプラにバレたら一発退場な羞恥プレイなのん」
「基礎研究に理解のないバカに駐車券を渡した覚えはない」
がおーっとあくびをする如月を見て、遥は肩をすくめ煙草を吸った。
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