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第24話*

「あのね、『どんぶり』の意味は、稜而に訊きなさいって言われちゃった。それとめろめろぱんちは嘘だって、稜而に同情するって」 仕事から帰ってきた稜而を書斎の椅子に座らせ、遥は素肌にガウン一枚の姿でその上に向かい合って座り、つなぎ目をゆるゆると揺すりながら、一日の出来事を報告した。  稜而の書斎はクラシックな趣で、上げ下ろし窓を囲むように壁一面に飴色の意匠を凝らした本棚があり、部屋の中央に両袖のマホガニーのデスクと、応接セットが置かれている。  デスクの傍らには、日本人成人男性の骨格標本から型どりした実寸大の骨格模型が、スタンドで頭頂部から吊るされてゆらゆらしているが、今は遥のガウンの紐で目隠しされて、椅子の上で対面座位を楽しむ二人の姿は見えないことにされていた。 「なるほど。……遥の話を聞いた俺の感想は二つ。まず一に、ゲイを許容してくれる友人でよかった。面白おかしくされたり、距離を置かれたり、変に可哀想がられたり、遥が嫌な思いをする可能性はたくさんあった」 「あ、そういえばそうだね」 「二に、セックスは秘め事、つまり秘密だから、聞かされる方の気持ちにももう少し配慮があってもいいと思った。遥が秘密を暴露してしまったら、今度は秘密を聞かされた人が、その秘密を持ち続けなくちゃいけない。それは相手の負担になる」 「そっかー。秘密って火のついた爆弾みたい」 「そのイメージは的確かも知れない。自分で火をつけた爆弾なら、安易にほかの人に渡さず、最後までしっかり自分で抱えて、処理しないといけないのでは?」 「うん」  遥の見えない耳としっぽが垂れたように感じて、稜而はミルクティ色の巻き髪を撫で、薔薇色の頬にキスをした。 「遥はあまりたくさんの秘密を抱えるのは得意じゃなさそうだし、俺の身元を明かさなければ、そういう話題のときに、相手の負担にならない程度に話すのは構わない。むしろ遥に決まった相手がいると宣伝するのは、いい予防線になる」 「話していいの?」 首を傾げた遥の額に、稜而は自分の額をこつんとくっつけた。 「いいよ。決まった相手がいると周知できれば、遥にセックスを申し込もうとする人は減る。そのぶん遥は受験勉強に集中できるだろ。セックスパートナーは一人だけ、決まった人がいるときちんと言うんだぞ」 「うん。掛け持ちはナーシ! 両手に握るのは子宝祈願のチンコ飴!」 遥は両手に棒を握って、交互に舐める真似をする。 「そう。いずれ飴も買いに行かないとな」 稜而は可笑しそうに笑って、遥の身体を揺すりあげた。 「やーん、変になっちゃうー。遥がめろめろぱんちにやられちゃうのー」 「やられればいいだろ」  遥は稜而の首に縋り付いて、全身に広がる甘い刺激を楽しんだ。 「あっ、ン……っ。はあっ。稜而ぃ、もっとしたいー。もっと揺れたいのー。めろめろぱんちしてー!」 遥は椅子のひじ掛けに膝を掛けてぴょんぴょんと腰を揺らし、稜而は苦笑して遥を抱き上げ、デスクの上に寝かせた。 「デスクの上なんて、超、えっちー!」 「こんな場所でするのに嬉しそうにしているなんて、遥は変態だ」 「稜而が一緒にしてくれるから、いいんだもーん」 「遥みたいな変態とセックスできるのは、俺だけだから仕方ない」 遥の内壁を味わうようにゆっくりと押し込み、引き抜き、硬い芯を擦りつけるのを繰り返す。 「ああ、稜而……ぃ……」 「気持ちいい?」 「うん、……っ、はあ。いっぱい擦れて気持ちいい……」 ぎりぎりまで引き抜いて入口付近で小刻みにすると、遥は眉根を寄せ、切なげに訴えた。 「やーん。寂しい。奥までしてぇ」 「どうしようかな」  稜而は自分の唇をぺろりと舐めて、遥の上に覆いかぶさるが、遥の望む深さにはしなかった。 「意地悪しないで。稜而ぃ」 「遥のセックスパートナーは俺だけ。宣伝はしていいけど、暴露話は相手の負担にならない程度に。わかるか?」 「あーん、わかる!」 「いい子だ」  稜而はローションを塗り足して、一息に遥の中へ押し入った。  遥は顎を上げ、稜而の肩に爪を立てる。稜而はキスで遥をあやしながら根元までしっかり収めて、腰を揺すった。 「あん、あんっ、稜而っ! 稜而っ!」  痺れるような刺激に遥は喘ぎ、こみ上げる甘さに声を上げる。全身を炭酸水が巡るような快感に包まれて、絶頂へのはしごを駆け上がった。 「あっ、あーっ、稜而ーっ!!!」 熱水が噴き上げるような感覚に、遥は全身を硬直させた。  締め上げられて、稜而も快感へ身を躍らせる。 「くっ、はあっ、遥っ!!」 がくがくっと揺すぶって、そのまま遥の身体の上に崩れ落ちた。 「弁当を作る?」  欲の抜けた身体をベッドに横たえ、大きなベッドの真ん中へわざわざ身体を寄せ合って、意味もなく互いの髪や頬を撫でつつ、水泡がはじけるようなキスを繰り返しながら、稜而は遥の言葉を聞き返した。 「うん。オレ、辛い物以外なら、いつでもどこでも何でも美味しく食べる天才だと思ってたんだけど、そろそろ遥ちゃんの手料理が恋しくなってきちゃった。遥ちゃんの作った弁当が食べたいのーん……」 「キッチンは好きに使えばいいし、止めはしないけど、学業優先だぞ?」 「うん。稜而のも作ってあげるね!」 若草色の目を細める遥の頬を、稜而は心配そうに撫でた。 「とにかく無理のない範囲で。俺は一年中外食でもコンビニ弁当でも生きていけるから」 「わかったーん」  おやすみとキスをして、遥の華やかな香りを胸いっぱいに満たしながら眠りにつき、翌朝、稜而はキッチンに立つ遥の後ろ姿に瞬きをして、その直後には抱き着いていた。 「何をしてる?」 「お弁当作ってるー! 玉子焼き、久しぶりだったけど、上手く焼けたのーん!」 「そうじゃない! この服装!」 「あーん、ジョーハツしちゃったー? 裸エプローン!!!」 遥は全裸に、胸当てがハート型になった真っ白なフリルエプロン一枚だけを身につけて、キッチンに立っていた。  エプロンの白いリボンの下には、遥のパン生地のような白くてふわふわした小さなお尻が剥き出しになっている。 「お主、俺様が尻フェチと知っての所業か? ちなみにジョーハツではなく、発情」 「おーいえー! ハツジョー! 立つんだジョー! 稜而のジョーも勃っちゃったー?」 「当たり前だろ!」 否定せずパジャマ越しにぐっと押しつけると、遥は声を立てて笑い、振り向いてドレンチェリーのように赤い唇を稜而の唇へ押し付けた。
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