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第29話*
「せっかく小遣いを突っ込んで買ったんだから、活用しないとな」
稜而はポロシャツとジーパン姿のまま、遥だけをベッドの上で裸にさせた。
「あーん、一人だけ裸になるって、すっごい恥ずかしいのーん!」
横向きになって膝を抱える遥の肩にキスをする。
「今だけの我慢。あとで一緒に裸になってやるから」
稜而は黒いビニール袋を逆さまにして、おもちゃを全部ベッドの上に並べた。
「どれを使おうかな」
首を傾げる割に、迷うことなく二股のピンクローターを遥の胸の粒に一つずつ押し当て、絆創膏で固定する。
「はあん!」
「まだスイッチは入れていないだろう」
「あーん、稜而にこんなことされてるっていうだけで、いっちゃいそうなのーん!」
「簡単だな」
片頬を上げて小さく笑いながら、横向きに寝かせた遥の尻の狭間へローションをつけた指を沈め、さらに男性器を模した張型をゆっくり押し込む。
「んんっ! ん!」
「俺のより小さいぞ」
「あーん、見栄っ張り!」
「見栄っ張りかどうか、あとでしっかり分からせてやる」
「はあん、楽しみなのーん……」
「電動で動くおもちゃはこの二つだけなんだな。意外に少なかった」
「だって、まだ見ぬキャベツと一緒に、いちゃいちゃ使うつもりだったからーん。動力はキャベツと遥ちゃんのエッチな手なのーん」
「なるほど」
稜而は通話をつなぐと、遥の顔の傍にカーマインレッドの携帯を置き、自分の黒い携帯をポケットに入れて耳にヘッドセットを装着した。
「さて、どうぞごゆっくりお楽しみください」
「あんっ! ひゃああんっ! ああっ、やあああっ!」
スイッチを入れ、遥が鳴き声を上げ始めると、稜而は寝室を出て家じゅうを歩き回り始めた。
寝室から直接廊下に出て、ドアを閉めると声の大きさはかなり小さくなる。何度か開け閉めをして、近づいたり、離れたり、ドアに耳を押しあてたりして音量を確かめた。
寝室のバスルームで聞いても音は控えめで、ドレッシングルームは多少聞こえるが、反対側のドアを開けてキッチンへ行くとその声は全く聞こえなかった。
「思ったより防音効果が高いな」
一階へ降りて、寝室の下にある和室へ行き、耳を澄ます。
「遥、たくさん動いて」
「あーん! はあんっ! 動いてるよぅ! 稜而にバックからされてるって思って、いっぱい動いてるのーん! やーん、激しいっ!」
「全然、物音が聞こえないな」
ヘッドセットで甘い声を聴きながら、稜而は一階も歩き回り、さらに庭に出た。
バルコニーのすぐ下へ回り込んでみたが、遥の甘い悲鳴はヘッドセットから聞こえてくるだけで、窓越しには何の物音も聞こえない。
ただ静かに鳥のさえずる音や風が吹き渡る音、虫の羽音だけが響く、清らかな庭を一周歩いて玄関へ戻り、内階段を上がって、寝室のドアの前でようやく微かにヘッドセットから聞こえるのと同じ甘い声が聞こえた。
「あっ、あんっ! ああんっ、稜而っ! 稜而っ!」
ドアを開けた瞬間、嬌声が流れ出てくる。
遥はベッドの上にミルクティ色の髪を放射状に広げ、白い肌を薔薇色に上気させて、胸にピンクローターを貼りつかせ、尻にバイブレーターを受け入れて、力なく手足を投げ出したまま、ひくひくと身体を震わせていた。
「おまたせ」
「はあ……んっ……、稜而ぃ……」
熱い息を吐き、蕩け切った顔で稜而を見上げる遥の頬にキスをして、ベッドの上へ乗った。
「楽しそうだな」
「あーん。おもちゃは遥に全然優しくしてくれないのーん! 稜而、来てぇ!」
両手を伸ばす遥の傍らに座り、ニッコリ笑い掛けるくせに
「どうしようかな」
稜而はコントローラーへ手を伸ばして刺激を最強にした。
「いやーんっ!!!!!」
遥は全身を強張らせ、ひくん、ひくんと震えた。
稜而は満足げな笑みを浮かべながら衣類を脱ぎ捨て、遥の身体を抱き締めた。
「稜而の意地悪……」
尖る唇にキスをして、スイッチを切ったおもちゃをそっと遥の身体から取り除く。
「おもちゃと俺、どっちがよかった?」
「稜而!」
「それはよかった」
小鳥がさえずるような音を立ててキスを遥の全身に落とし、腫れている胸の粒を口に含んで、そっと舌先でくすぐる。
「はあん……。稜而……ぃ。気持ちいい」
遥は稜而の頭を抱いたまま、すうっと身体を強張らせ、ゆっくり弛緩した。
「いったのか?」
「うん。いっちゃった……」
遥の言葉に稜而は笑って、遥の首筋へ顔をうずめ、鎖骨から肩へ舌を這わせ、全身を撫でまわし、心臓の上の皮膚をきつく吸い上げた。
「あ……んっ! 稜而? どうしたのっ?」
稜而が顔を上げたとき、遥の皮膚には赤い内出血があった。
「キスマーク……ぅ?」
「そう。吸引性皮下出血」
ちゅ、とキスマークにキスをして、稜而は遥の足の間へ自分の腰を進めた。
解れた場所へ難なく己を押し込んで、稜而は遥とキスを交わすと、すぐに抽挿を始めた。
「ああ、遥……っ」
稜而は遥を抱き締めて強く腰を打ちつけ、遥と自分を追い立てた。
「りょ、稜而……」
「俺がいかせてやるっ」
速度を速め、遥が声を上げて達すると、稜而も己を解き放った。
「稜而、独占欲強いのーん……」
「うるさい」
遥が笑い始めると、稜而も遥の胸に額を押し付けたまま笑い始め、二人はだんだんに笑い声を大きくして、おもちゃが散らばるベッドの上を腹を抱えて笑い転げた。
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