50 / 191
第50話*-冬至編-
「今日は冬至! キャベツと一緒に柚子湯に入って、あはーんとかうふーんとかしちゃう日なのよー! 日本のお風呂習慣ステキなのーん! ♪とうじのひはさむーい、バスルームをふいにのぞけば、しろいバスタブのなかから、りょうじがこっちみている、バスタイムたのしいー♪」
遥は庭から持ってきた笊いっぱいの柚子を、大きなバスタブの中へ落とした。
「ずいぶん入れるんだな」
すでに湯に浸かっている稜而が、水飛沫から顔をそむけつつ、苦笑する。
「傷があって、食べられない柚子なんだって。これでも一階と半分こにしたのよん。♪おお、ゆずっ、ゆずっ、ゆずっ、ゆずっ、とうじー! ゆずっ、ゆずっ、ゆずっ、とうじのふうぶつしー♪」
大小さまざまな柚子を全部入れると、「仕上げ!」と言って、間抜けな顔をした茶色いぬいぐるみをひとつ水面に浮かべた。
「なんだ、このぬいぐるみは? 馬か? リスか?」
稜而は笑いながら、一気に湯を吸ったぬいぐるみを両手で持ち上げる。
「えー? カピバラよ! テレビで『今日は冬至です。柚子湯を楽しむ日です』って、柚子と一緒にカピバラが、温泉にたくさん入れてあったのよー!」
「なるほど」
稜而はずぶ濡れのカピバラと鼻をくっつけあいながら、くすくすと笑った。
「あーん、遥ちゃん、また日本文化を間違えたかしらーん?」
「カピバラは、柚子湯のアイテムじゃなく、ユーザーだ」
「えー? 柚子湯ユーザー?! 柚子と一緒に水面にみっしり浮かんでたわよー? 人間の風邪を予防するダシが出るんじゃないのー?」
遥は服を着たままバスタブのふちに腰掛け、足を組んだ。
「猿が温泉に入るのと同じだよ。柚子があってもなくても、カピバラは寒い日は風呂に入る」
「はあ……。おかしいなとは思ったのん。遥ちゃんがご幼少のみぎりの日本の冬至は、柚子だけだった気がしたから。でも、いろんなテレビ番組でカピバラが入っているのを見たから、カピバラは最新の流行なんだと勘違いしちゃったのよ」
指先だけ湯に浸けて、ぐるぐると渦巻きを描く手を、稜而は掴んだ。
「……最新の俺の流行は、遥湯に入ることなんだけど。いつ遥は入って来てくれるんだ?」
「あーん、お支度ができるまで、ちょっとだけお待ちくださいませませね!」
遥はぱっと笑顔になると、バスルームの中のトイレとシャワーブースを慌ただしく行き来して、全身を綺麗に洗い上げ、濡れた髪をヘアゴムで結い上げる。
「はぁーい、キャベツ。お待たせしましたなのーん」
片足を上げて、ぷかぷかと柚子が浮かぶ湯の中へ、白く細い爪先からそっと入ってくる。
爪先、足首、膝、バスタブを跨ぐ脚の間の果実、丸くて白い尻、腰、背中、淡い胸の色づき、鎖骨……。遥の肌を水面が撫でていく様子に、稜而は目を眇 めたが、遥は稜而の様子には気づかず、ぬいぐるみを自分の手の上に載せる。
「カピバラって、ネズミっぽく見えないのん」
「そんなことを言ったら、あの ネズミなんて二足歩行だぞ」
話しながら抱き寄せて、自分の腰の上に向かい合わせに座らせた。
「あーん、それを言ったら、闇の組織に抹殺されるのよー」
遥はぬいぐるみから手を離し、両手の人差し指を、稜而の唇の前で交差させた。
稜而はその人差し指へキスをして、そのままそっと口に含む。
口の中で舌を絡めると、遥も指先を動かして稜而の舌をくすぐって、二人は目を見合わせて笑いあった。
「噛んだら痛いのん」
稜而が歯を立てると笑って、その隙に両手で脇腹を撫で上げ、胸の粒へ触れた。
「んんっ」
甘い痺れに遥は身をよじるが、逃げようとはせず、大人しく稜而の腰の上にいた。
「ひもひいい?」
遥の指を咥えたまま訊くと、遥はまた笑って、素直に頷いた。稜而は口を指から離して、にっこり笑う。
「もっとしてあげる」
遥は頷いて、稜而の肩に掴まった。
「あっ、う……ん。ン……、稜而……」
遥は快感がこみあげるたびに目を細め、肩を竦める。その反応が色っぽく、可愛らしくて、稜而はしつこく親指の腹で捏ね回した。
「ん。はあ……。気持ちいい……。いっぱいして欲しくなっちゃうのん……」
「いいよ。いくまでしてあげる。口でしようか?」
頬にキスしながら囁くと、遥は膝立ちになり、稜而の口元へ自分の胸の粒を差し出した。
ちゅ、とキスで挨拶をしてから、稜而は目を細めて遥の胸の粒を口に含み、舌先で転がした。
「あっ、ああん。稜而、稜而……っ」
反射的に逃げそうになる身体をしっかり抱いて、遥が身体を強ばらせ、ひくん、ひくんと震えて、稜而の腕の中で崩れるまで、刺激し続けた。
「はあっ、はあん。……いっちゃったのん」
遥は俯き、上目遣いに稜而を見ると、照れて笑った。
「気持ちよかった?」
「うん」
「反対側もしてあげる。おいで」
「でもでも、遥にしてる間、稜而は気持ちよくないのん……」
「いいんだってば。何度も言ってるけど、最後は全部俺が頂く。遥はそれまで何度でもいけばいい」
きゅっと反対側の胸に吸い付き、遥はまた甘い声を上げ、ひくひくと身体を震わせてぼんやりした。
「セックス、大好きなのん……。ねぇ、稜而。もっと欲しくなっちゃったの……。ちょうだい」
バスタブの底へ手を伸ばし、硬くそそり立つ稜而の象徴を手のひらに包んで上下にさすった。
「もう? おねだりが早くない?」
「だって、一昨日は遥ちゃんが拙者不覚にござる無念って寝ちゃって、昨日は稜而が当直で、こぶたさんなんだもの」
「ご無沙汰? 当直の日は、一人でする約束だろ? 俺が訊いたら、ちゃんとしたって言っていたじゃないか」
「あーん。したけど! 稜而の枕を抱っこしながら、はあん見ないで恥ずかしいああん稜而ってふりふりしたけど、一人でするのは、せっくすじゃないもん。あいあま、せぶんてぃーんなのよ。たりないのん! 稜而のビッグマグナムで遥ちゃんをあーんってさせてほしいのん」
遥はぴょこぴょこ跳ねて、大小の柚子がぽかぽか揺れた。
「そんなにビッグでもないけど……」
稜而は苦笑しつつ立ち上がり、遥を壁に向かって立たせると、コバルト色のポンプからローションを手に受けて、遥の丸くて白いパン生地のような尻の間を探った。
欲しがっているだけあって、指の侵入は容易で、遥の甘い声を聞きながら内壁を探り、好む場所をそっと撫でた。
「あんっ! はぁっ、ああんっ! ソコ、押してっ!」
積極的に突き出されてくる尻を左手で掴むように撫でながら、右の指で望み通りの刺激を与えると、遥はまもなく身体を震わせた。
「はぁっ、はぁっ……」
稜而に向かって尻を突き出したまま振り向く遥の頬は赤く染まり、艶が乗って、瞳は潤んでいた。
「可愛い、遥」
稜而は満足気に微笑み、背後から抱き締めると、ねだるような声で囁いた。
「遥の中に入りたくなってきた。いい?」
遥は頷き、稜而が手にした正方形の包みを指先でつまんで取り上げると、パッケージの端を引き裂いて、薄い膜を取り出す。
跪く遥の前に、稜而が素直に己の変化を差し出すと、遥は稜而の変化にキスをしてから、舌を出して舐め上げる。
「あっ、遥……」
「ふふっ、美味しいのん」
屹立の根元にある果実まで舌を這わせ、口に含み、稜而がうっと身を竦ませるのを楽しんでから、また根元から先端へ舐め上げて、そのままぱくりと咥えて、深く飲み込んだ。
柔らかくした舌を沿わせ、唇の輪で扱きながら、含み切れない根元も手のひらに包んで扱く。
「はあ……。遥……」
自分の形で膨らんでいる遥の頬を撫で、赤くぷっくり膨らんでいる遥の胸の粒を指先でなぶりながら、包み込む熱い粘膜と唾液のぬめり、そしてほかの誰も見たことがない、自分だけの遥の姿を堪能した。
「ありがとう、遥。もっと奥に挿れたい。着けて……」
頭を撫でると素直に頷いて、先端に薄膜をあてがい、指先で押さえて空気が入らないようにしながらするすると、茂みも掻き分けつつ根元まで膜をのばした。
さらには、たっぷりと手に受けたローションをまぶす世話までしてくれてから、遥は立ち上がった。
「ねぇ、稜而」
「ん?」
「あのね。…………来て」
耳まで真っ赤に染めながら、遥は稜而へ尻を突き出し、自分の両手で左右に割り開いて見せた。
「うっ…………わ。遥っ! お前、俺の心臓を止める気か……っ!」
稜而は言葉と同時に遥の腰を抱え、うなじや背中に無茶苦茶にキスをしながら、痛いほどに張り詰めたら己を擦り付けて、先端が引っ掛かったタイミングで遥を傷つけないように慎重に挿入すると、激しく腰を打ちつけた。
足元で湯が激しく波立ち、ぬいぐるみも柚子も大きく揺れる。
「ちくしょう、もっとゆっくり楽しむつもりだったのに! 止まらないじゃないか!」
稜而が突き上げるのと同じリズムで声を上げている遥を深く抱え込んで、稜而は手加減することなく自分たちを追い上げた。
「りょ、稜而っ!」
どうにか堪えて遥を一瞬先に遂げさせて、リズミカルに締めつけられながら、稜而も最奥で身体を揺すり、永遠とも思える長さで己の体液を放ち続けた。
「あーん、稜而ったら、いっぱい出たのん!」
身体を解いて、抜け落ちそうになっていた薄膜をつまみあげると、遥はドレンチェリーのように真っ赤な唇を左右にひいた。
「お前…………っ。よーし、わかった。もう一戦だ! ごめんなさいって泣くまでやってやる!」
ひょいっと肩へ担ぎ上げて、お仕置きにぺちぺちと尻を叩きながら、稜而は寝室へ向けて歩いた。
「あーん、今夜は寝かせてもらえないのよー! すてきー! カピちゃんまたねーん」
遥は稜而に運ばれながら、ゆらゆらと湯に浮かんでいるカピバラのぬいぐるみに手を振った。
ともだちにシェアしよう!