56 / 191
第56話*
割烹渡良瀬の大将が作ったおせち料理を食べ、雑煮を食べて、片付けを稜而に任せると、遥はバスルームへ行った。
「♪ド・ゴールくうこうはつのひこうき、おりてひかれたー! おおさきーえきは、さいかいはつー! はるかをみる、ひとのむれは、だれもやさしくー! ほどうへはこんで、くれたのよー! はーるかはー、ひとりー、きゅうきゅうーしゃーにのりー! おいしゃさんの、りょうじみつめ、ないていましたっ、あーあああー、おおさきふたばそうごうびょういんんんんん♪」
頭から足の先まで洗って乾かすと、バスルームに入って来た稜而と入れ違いに寝室へ行き、真っ白な足袋を履き、小桜模様が織り出された緋色の襦袢を着付け、ミルクティ色の髪を夜会巻きに結い上げて、朱塗りのコームで留めた。
白い半襟がかかった衣紋を少しだけ多めに抜いて、おくれ毛を揃えた指で左右交互に少し撫でつけ、鏡の中の自分に向かってニッコリ笑う。
「ふふふ。遥ちゃん、とっても素敵よ。色っぽいのん。これで稜而はイ・チ・コ・ロなのよー!」
窓辺に立ち、カーテンを少し開けて、東京の白んだ夜空に浮かぶ小さな月を見ていたら、背後で息を飲む気配があった。
「しめしめ、なのん」
遥が我慢して振り向かず、月を見上げ続けていると、目論見通り背後から稜而に抱き締められた。
「きれいだ、遥……」
稜而の声は早くも熱に浮かされたようになっていて、首に頬を擦りつけてはキスを繰り返している。
「稜而、オオカミになっちゃう?」
「なっていい?」
「もちろんなのよ! 赤襦袢ちゃんはお待ちかねなのん。あの月に向かってわおーんって遠吠えして、変身していいのよ」
稜而は小さく笑うと、甘く低い声で遥の耳へ「わおーん」と遠吠えをして、襦袢の上へ手を滑らせ、合わせ目からそっと手を差し入れた。
「もう乳首が尖ってる。触られるの、待ってた?」
ちゅ、と頬にキスをしながら質問されて、遥は素直に頷いた。
「あん。もちろんなのよ。朝からずっと、稜而とこうしたかったのん」
遥は稜而の後頭部へ手を掛ける。
「奇遇だな、俺も朝からずっと遥とこうしたいと思ってた。たくさん触って、全身で……」
稜而の温かな手が胸をまさぐり、尖っている乳首を指先でなぶると、遥の身体は小さく震え、鼻にかかった甘い声が出る。
「はあん、稜而……。ン……っ、稜而、稜而」
「遥。愛してる」
稜而は熱い吐息と共に自分の気持ちを告白しながら、しつこく遥の胸の粒をつまんで揺らし、遥は甘い刺激に耐えきれなくなって達した。
「はあっ、あ……。いっちゃったのん……」
「見てたよ。きれいだった」
熱くなっている頬へキスをして笑うと、遥の手をひき、ベッドの上へ誘う。
ベッドの上でしどけなく横座りする遥を見て、稜而は腕組みをした。
「さて、どうやって頂こうか」
「おすすめは、襦袢を着たまま、なのん」
「なるほど。ではそのおすすめ通りに頂こう」
稜而は遥の唇に噛みつくようなキスをして、そのまま押し切って遥を仰向けに倒し、舌を絡めとりながら、襦袢の胸元を左右に開く。
胸元を露わにすると、首筋からゆっくり舌先を這わせ、色づく胸の先端を口に含んだ。
「ンっ、稜而」
遥は耐えきれず稜而の腰に脚を絡め、稜而は口の中で飴を転がすように遥の胸の粒を弄びながら、腰に絡む脚を辿り、襦袢越しに遥の尻を撫で回した。
「あっ、んん、稜而……っ、稜而!」
遥の声が少しずつ緊迫していくのを感じ取りながら、なお一層追い詰めて、遥が腰を浮かせて仰け反るのを強く抱き締めた。
「稜而……っ、あああああっ!」
遂げて恥じらう遥の頬にキスをして、身体を離し、改めて遥の姿を見る。
真っ赤な襦袢の胸元ははだけて、稜而の唾液で濡れた胸の粒がてらてらと光っていた。
遥は左右の膝を擦り合わせているが、襦袢は膝上まで乱れて左右に開いていて、真っ白な太ももが覗く。稜而がそっと赤い布の端をつまみ、腿の上から布を取り去ると、その上にはいきなり先端を上向けて透明な蜜を滴らせる遥の姿があった。
「うっわ、マジか…………っ」
稜而は呟くなり倒れ込んで、遥の蘂を口に含んだ。
「ひゃうっ! はあん!」
遥は思わず稜而の黒髪へ手を差し込み、背中を丸めたが、稜而は遥の白い太腿を撫でてあやしつつ、蜜を啜りながら遥の蘂をむさぼる。
遥は甘い疼きが続くうちに、下腹部に熱が溜まるのを感じた。
「ああんっ、稜而っ、ダメ。ダメなのっ!」
「気持ちいいからダメ、は聞かない」
ぐりぐりと責め立てる速度を早められ、笠のふちを舌先で辿り、先端の窪みを舌先で抉られて、遥は身体を震わせた。
「ああああんっ!」
遥の蘂から噴き出た白い蜜を余さず飲み、さらに管の中に残る蜜まですべて吸い上げると、稜而は自分の唇をぺろりと舐めて、片頬を上げた。
「正月のご馳走は、格別だな」
ともだちにシェアしよう!