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第57話*

 達した遥は全身を投げ出し、片膝だけ少し内側へ曲げ、片手の甲を口の端にあてて、荒い呼吸を繰り返していた。 「赤い襦袢に白い肌なんて、芸術的な美しさだ」 稜而は感嘆して、足袋を履く足首にキスをして、ふくらはぎ、膝の裏、内腿と唇を這わせていく。  鋭敏な箇所はわざと避けて、今度は遥の手を取り、細い指の一本一本に舌を絡めてしゃぶり、手のひらを舐め、手首の内側を舌先でくすぐる。腕の内側の皮膚の薄い場所を丹念に舌で辿って、二の腕を経て、腋窩へ鼻先を埋めた。  遥が小さく抵抗するのを許さず、腋窩に鼻先を押し付けたまま、うっとり目を閉じて花の蜜のような濃厚な匂いを嗅ぐ。 「はあ……っ。いい匂いだ」 「やーん、いい匂いじゃないのん」 「俺の好きな匂いだ。興奮する」 遥の手を取り、自分の高ぶりへ導く。 「あーん。稜而ってば変態なのよー……」 「お互い様だろ」  導いた遥の手は、稜而の形を辿り、ゆっくり摩擦して、その硬さをよりしっかりしたものにしていく。 「あんまり刺激されると、挿れたくなる」  ぐっと遥の手に押しつけると、遥はドレンチェリーのように赤い唇を左右に引いた。 「遥も稜而が欲しいのん……」 稜而も目を細め、遥のほんのり赤く染まった目元へキスをした。  遥をうつ伏せにし、腰を抱えて膝をつかせ、尻だけを高く上げさせて、襦袢の赤い布を押し上げると、発酵したパン生地のように白くてふわふわした丸くて小さな尻が現れる。 「はあっ!」 声を上げたのは稜而で、尻を揉みしだきながら、その狭間へ倒れ込むようにして顔を埋めた。 「直接はダメよぅ……」 遥がサイドテーブルへ手を伸ばし、薄いシートを差し出して、稜而はそのシートを狭間へあてがうと、今度こそ存分に舌を這わせ始めた。  すでにローションが塗りこまれている箇所は、ねじ込まれた稜而の舌先で容易くほぐれ、遥は引きずるような甘い声を上げている。  さらにローションを塗り足して、指先で内部を探り、勝手知ったる場所を優しく突いてやると、遥は嬌声を上げ、枕を掴んで、全身を硬直させた。 「あああああんっ!」 稜而の指に内壁が絡みついて、ひくひくと蠢き、稜而は目を細めてそっと指を引き抜いた。  遥の白い尻に時折キスをして、身体が冷めないようにしながら、自分の身体から布を取り去り、襦袢姿の遥の背中を見た。 「脱がせてもいい?」  伊達締めを遥と一緒に外し、赤い布を取り去ると、真っ白な肌が露わになった。  遥は白い足袋だけ身体に残し、尻を高く突き出して、シーツに頬を押しつけたまま、若草色の瞳で稜而を見る。 「どうぞ、来て。なのん」 遥に微笑まれ、稜而はかはっと変な音の息を吐いた。 「エロすぎる! いてててて……」 いきり立つ分身を手で押さえて庇い、改めて背後に回って、差し出された丸くて小さなふわふわの白い尻に、己をあてがい、目を閉じて意識を集中しながらゆっくりと腰を進めた。  遥は眉の間に力を込め、シーツを掴んで顎を上げる。 「はあん、稜而……っ」  稜而は、ずり上がる遥を引き戻しながら、ようやく己を根元まで収めた。 「全部入った」 稜而が嬉しそうに笑うと、遥は振り返って微笑んだ。 「動いていい?」 「うん」 遥の笑顔に笑顔を返して、稜而はストロークをいっぱいに使って、ゆっくり抽送を始めた。 「ああ、気持ちいい……」 正直な感想を口にして、稜而は遥の背中に覆いかぶさった。身体の触れる面積が増えて、嬉しそうに笑う。遥は振り返り、包み込むような笑顔を稜而に向けた。  稜而は遥の身体を起こし、身体の向きを反転させて、自分の腰の上に向かい合わせに座らせた。 「んっ、深いのん」 微かに眉をひそめた遥を抱きしめ、稜而は緩やかに二人のつなぎ目を揺らした。 「遥。今年もよろしくお願いします。たくさん、俺とセックスしてくれ」 「あんっ! もちろんなのよ! 二人でいっぱいあーんってしましょうなのん。変なことも、恥ずかしいことも、真面目なことも、嬉しいことも、楽しいことも、辛いことも、苦しいことも、全部一緒にしましょ」 遥の言葉に、稜而は笑顔を輝かせた。 「遥と一緒だと思うと、一年が楽しみだし、嫌なことや面倒なことも軽いことのように思える」 「よかったのん。遥ちゃんも今年は受験が始まるけど、怖くないわ。……ああんっ。んっ」 「大丈夫。遥なら心配はいらない」 「でもでも、遥ちゃんは実は緊張しいなのん。不安なときは手を握ったり、抱っこしたりして欲しいのん」 「もちろん。眠れないときは疲れさせてやるし、怖かったら朝まで一緒にいてやるよ。……もちろん、次の夜まででも、その次の朝まででも、ずっとずっと一緒にいるけど」 「あーん、愛してるわ、稜而!」 「俺も愛してるよ、遥」  二人は強く抱き合って、再び身体を揺らし始めた。 「あーん、もっと、もっとなのん……っ」  遥が腰を前後に振り、稜而は下から突き上げ、欲望が高まるにつれて身体の動きは激しくなる。 「あん!」 稜而の屹立がつるりと抜けて、二人はのぼせた顔を見合わせ苦笑する。遥はすぐに手を添えて改めて自分の中へ導き、稜而の肩を軽く向こうへ押して、騎乗位になった。 「遥ちゃん、淫乱になっちゃうのよ!」 「大歓迎だ」 遥は真っ白な足袋だけを身につけたまま、稜而の腰の上で大きく膝を開いた。 「いい眺めだ」 「これから、もっといい眺めよ!」 遥はゆっくり数回、稜而の腰の上で上下すると、あとは根元まで深く飲み込んだまま、擦り付けるように前後に腰を振った。  稜而の屹立は、遥の体内で暴れ回り、内壁をぐるぐると擦る。遥の内部の敏感な膨らみも容赦なく擦って、押して、遥の胸には切ないような快楽がこみ上げてくる。  太腿や腰を稜而の熱い手がゆっくりと大きく撫でて、遥は安心して脚を開き、声を上げ、快楽を求めて、素直に乱れた。  きゅっと稜而の指が遥の胸の粒をつまみ、捏ねられる刺激がとどめとなって、遥は声を上げて遂げた。  遂げた遥の腰を掴んで強く揺すぶり、稜而も咆哮しながら遥の中で遂げた。  ふわふわと揺れている遥を抱き寄せ、二人の身体を手繰り寄せた赤い襦袢で覆う。 「いっぱいいっちゃったのん……」 遥は照れくさそうに笑い、稜而は額をこつんとくっつけながら、遥へ笑いかける。 「とてもきれいだった」 さらに照れる遥を自分の胸に抱いて、ミルクティ色の髪に頬擦りし、稜而は深く呼吸をして、満たされた笑顔で目を閉じる。  遥も稜而の頬へそっとキスをすると、稜而の肩へ額を擦りつけ、満足そうに息を吐いて目を閉じた。 「あいしてる。だいすきよ。今年もよろしくお願いします、なのん」

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