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第62話*

 遥の身体の上で遂げ、遥の髪にキスしながら抗えない眠りに落ちた稜而の寝顔を見る。  奥二重の目は閉じられ、少し長い前髪はこぼれて狭い額を露わにしている。しっかりした鼻梁が顔立ちを整え、意外に厚さのある唇はふわりと遥に触れる。アダムのリンゴがつかえたような喉仏や、太くはないが逞しさが感じられる首筋は、稜而の身体に男性らしい特徴を与えていた。そして平らな胸の上には銀色に光る天使の片翼。 「ペンダントを揺らしながら揺れる稜而はセクシーだったのん……」  その反対側の翼が、遥の首に下がっている。  クリスマスプレゼントだったが、両親の再婚話で吹き飛んでしまい、さっき改めて稜而がプレゼントしてくれた。 「『愛してる』って、遥の首に掛けてくれたのよ。遥ちゃんも稜而の首に掛けてあげて、一緒にキスをしたわ。ロマンチックな夜よ」 お先になのんと、稜而の体温が移ったペンダントにキスをして、バスルームへ足を踏み入れる。 冷えた水滴の上を歩き、シャワーブースの中に二つあるうちの手前側のシャワーの栓をひねって湯を浴びた。 「♪しーんぱーいないからねー、はーるーかーのおもいーがー、りょうじにとどくー、まいにち、だいじょうぶー! りょーじーのおーもいもー、はーるーかーにとーどーくー、これからずーっと、まいにち、かならずあいはかつー♪」  肌の上で乾き始めた白濁や、塗りたくったぬめりを洗い流し、バラの香りがするシャンプーやトリートメント、ボディーソープで全身を洗った。  髪を絞り、ねじり上げてクリップで留め、湯をためたバスタブに身体を沈めて、ほうっと息をつく。 「はあ、ビバノンノンなのよー……」 ゆったり目を閉じていたら、トン、トトトンと独特のリズムでドアがノックされ、遥が了承するより先に稜而がバスルームへ入ってきた。  タイルの衝立の向こうのトイレで用を足し、ガラス張りのシャワーブースへ入って、奥のシャワーヘッドの下に立つと、メントールの香りがするシャンプーやリンス、ボディーソープを使って全身を洗う。  遥はその様子を存分に眺めて堪能し、目が合った稜而にひらひらと手を振って見せると、稜而は片頬を上げた。 「俺が頭や身体を洗っているところなんて、見て楽しいか?」 バスタブの中へ入りながら、稜而は訊く。 「楽しいわーん。好きな人のプライベートを見るのって、興奮しちゃう」 バスタブの中をすいーっと泳いで、稜而の脚の間に収まりながら、遥は素直に返事をした。 「まだ興奮できそう?」 「あんっ!」  いきなり男の本丸を手で探られて、遥は身を竦める。 しかし稜而の腕の中に抱かれ、キスを受けながら刺激されると、遥のシンボルは容易く膨らんだ。 「エッチな身体だな。もうこんなに大きくしてる」 「あーん、エッチなのは稜而のお手手よー!」 「遥のお手手はエッチじゃないのか?」 「やーん。もちろんエッチなのよー! ビンビンにさせちゃうわー!」 向かい合って座った遥は、すぐに稜而のシンボルを探り当て、手の中に包む。適度な力と速さで煽ると、簡単に硬直した。 「はあっ、気持ちいい……」 稜而が悩ましげに息を吐く。しかし、遥を煽る手も止めず、遥も稜而の肩に額を押しつけて、快楽に耐えた。 「ああん、むずむずなのん……」 肩を竦めていた遥に、稜而は顔を覗き込んで提案する。 「競争する? 先に果てたほうが、写真を撮らせる」 「写真?」 「そう。一人きりの夜に見て楽しみたくなるような写真」 「エッチな写真ってこと?」 頷く稜而を見て、遥は顔を輝かせた。 「負けないのん! 巨匠・遥ちゃんが、えっちっちーな稜而の写真をいっぱい撮るのーん!」 動かす手の速度を早め、稜而の首筋へキスをして、耳元へけだるい吐息を吹きかける。  稜而は眩しい物を見るかのように目を眇め、呼吸を荒げる。  遥は自分の唇をぺろりと舐めて、さらに手を早めた。 「ああ、遥……。いきそうだ……」 「しめしめなのーん!」 顎を上げて喘ぐ姿に、遥がニッコリ笑ったとき、稜而はパッと目を開いて、遥の背に手をあて、溺れないように気遣いながらのしかかった。 「形勢逆転!」 「あっ! ん、むぅっ……」 唇を奪われ、舌を絡め取られて、遥は目を閉じる。稜而の唇は首筋から胸骨へ至り、胸の粒を口に含んで、舌先でなぶる。 「ん……っ。ああ、稜而ぃ……」  遥は眉間に力を籠め、泣きそうな表情で、稜而からの刺激に身体を震わせた。 「気持ちいい?」 「ん……っ。気持ちいい」 「いっていいよ。写真を撮らせて。遥の写真が欲しいんだ」 「はあん。……稜而、稜而っ」 約束よりも遂げたい欲求に突き動かされて、遥は稜而のシンボルから手を離すと、両手を稜而の首に絡め、快楽を追った。 「やんっ、いっちゃう……」 「もういきたいんだろ? いけよ」  胸とシンボルと、さらに尻の奥へ指を差し込んで刺激されて、遥は身体を震わせた。 「ああーんっ!」  遥は頬をバラ色に紅潮させて、肩を上下に動かして荒い呼吸を繰り返した。 「俺の勝ち」 「あ、あ……、もう。もうっ、遥ちゃんのいくじなしなのんっ! むきーっ!」

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