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第80話*
「さて、マットレスを床に置くか!」
「おーいえー!」
軋むベットフレームからマットレスを外して床に置き、二人は交互にバスルームを使った。
稜而があとからバスルームを使って部屋に戻ると、遥はマットレスの上に座り、つま先から膝に向けて、丁寧にボディオイルを塗り込んでいた。
「久しぶりの硬水は、髪も肌も乾燥するのん。♪ああーぁぁぁぁぁ、ココナッツオイルぅぅぅぅぅ。はるかのかたを、だいてつつんでしっとりするのーぉーぉー!♪」
稜而の鼻にココナッツオイルの甘い香りが届く。
「いい匂いでしょー? 赤ちゃんの肌にも使えて、舐めても大丈夫なオイルなのん」
稜而はその香りを胸いっぱいに吸い込みながら、マットレスの上に座った。
「背中、塗ってやるよ」
遥の身体からバスローブを取り去り、全裸にしてマットレスの上にうつ伏せにさせると、稜而はオイルを自分の両手で温めて、ゆっくり遥の背中に塗り広げた。
首から肩、背中を丁寧にマッサージしてやり、遥の手の指の一本一本へも丁寧にオイルを塗り込んで、手首、腕、腋窩へと、末端から中心に向けて揉みほぐしていく。
「気持ちいいのん……。♪ムランよいとーこー、いちーどはーおいでー♪ なのん。ふわわわわ……。♪りょうじさまでも、セーヌがーわでも、あ、どっこいしょー、ほれたーやまいーは、こーりゃ、なおらーないのん、ちょいなちょいなー♪ あふーん……」
「眠くなったら、寝てもいいぞ」
膝を曲げて足を跳ね上げさせ、桜貝のような足の小指の爪を見ながら、丹念に足の指や土踏まずや踵をマッサージし、ふくらはぎを足首から膝に向けて、太腿を膝裏から尻に向けて揉んで、最後にゆっくり尻を撫で回した。
発酵したパン生地のように滑らかでふわふわしていて、どれだけ触っていても飽きることがない。尻たぶを下から持ち上げ、内側から外側へ撫でると、狭間に濃い紅色の窄まりがちらりと見え、稜而の目を刺激した。
しかも尻を左右に割り開くたび、遥が悩ましげな息を吐く。
「はあっ……ん……っ」
遥の秘所、艶のある吐息、手のひらに吸いつくような尻、ココナッツオイルの甘い香り、感覚を刺激され、稜而は下腹部に血液が集まるのを感じ、目を閉じてゆっくり深呼吸をした。
稜而は促して遥を仰向けにさせる。遥は稜而の腰に脚を絡め、無言で催促をした。
「もう? ダメだよ、まだお預け」
目を弓型に細め、自分と遥の両方に言い聞かせる。遥は熱っぽく潤んだ瞳を伏せた。
またオイルを手のひらで温め、遥の耳の後ろから鎖骨まで、首筋を指先で撫で、そのまま鎖骨を肩まで辿る。
途中、遥が身につけたままのネックレスのチェーンが稜而の指に引っ掛かり、片手でペンダントトップを持ち上げてから、チェーンの下を撫でて、肩へ向かった。
遥の身体は朱を帯びて、呼吸が早くなっていたが、稜而は気づかないふりで遥の身体を撫で回す。
脇腹を滑り、腰を経て、膝から太腿の内側をゆっくりと撫で上げた。
「あんっ」
「あまり大きな声を出すなよ」
鼠径部をしつこく撫でて遥の身体を震わせてから、さらに上へ移動して、薄い胸を撫でた。
少しづつ撫でる範囲を狭め、胸の色づきの周りを撫で回すが、稜而は粒には触れずにいた。
「んっ、ん……っ」
遥が身じろぎをして、自分から稜而の手に胸の粒を触れさせようと身体を動かす。
「まだダメ」
稜而はすっと手を離し、遥が大人しくなるのを待ってから、再び周辺を指先で撫で回した。
「おね……がいっ、稜而……」
「どうしようかな?」
稜而はおどけて首を傾げ、遥に笑いかけながら、自分もバスローブを脱ぎ捨てて全裸になると、遥の身体に覆いかぶさった。
「あったかいのん」
遥は手も足も絡めて稜而に抱き着いた。
「キスして、遥」
「はいなのん」
稜而の首に腕絡め、少し頭を持ち上げて、稜而の唇へちゅっとキスをする。稜而はキスをしながら遥の頭をマットレスの上へ押し返し、そのまま舌を差し込んで、遥の口内を探った。
「ん、んっ!」
粒の揃った歯列を辿り、歯と歯茎の境目を舌先でゆっくりくすぐり、官能に気を取られて緩んだ上下の歯の間へ舌を滑り込ませてこじ開ける。
「んあっ!」
奥へ逃げる舌が伸びて来るのを待ち、絡め取ってわざと強く吸う。舌の付け根に軽い痛みを感じた遥が身体を震わせた。
「痛かった?」
「少し」
「舐めて治してやる」
稜而の言葉にふわりと笑った遥の口の中へ再び舌を差し入れ、ぬるぬると絡めあう。
「ん、ふ……っ」
鼻にかかった声が漏れ、キスに夢中になったタイミングで、稜而はそっと胸の粒をつまんだ。
「んんっ!」
キスで声を吸い取りながら、つまんだ粒を揺さぶり、指先の間でくりくりとねじる。
「ん、ん、んんっ!」
「気持ちよさそうだな、遥。もう身体がびくびく震えて、いきそうな顔してる。いっていいよ、ほら」
きゅっと強くつまむと、遥は全身を震わせ、硬直させて、ゆっくりと弛緩した。
「気持ちよさそうな顔。もう一度いかせてやる。右と左、どっちを先に口でしてほしい?」
「…………右、かな」
遥は真っ赤な顔を背け、シーツに頬を押しつけながら答えた。
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