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第99話*
清潔なシーツの上に遥を横たえると、遥はミルクティ色の髪を広げ稜而に向かって両手を伸ばした。
「愛してるのん。大好きなのよ……。何度、言葉で言ってもたりないわ……」
「遥」
腕の中へ稜而は倒れ込み、二人のペンダントも重なって小さな音を立てた。
「俺も愛してる。遥のことが大好きだ。愛してる、愛してる……。大好きだ」
言いながら遥の頬に、髪に、肩に、首筋にキスをした。
「稜而が欲しいのん。一緒に好き好きってしたいのよー」
「もちろん、一緒にしよう」
稜而は遥の顔を見て、弓形に目を細め笑いかけた。ドレンチェリーのように赤い唇を左右に引いて笑い返す遥と一緒に、互いの息を吸い合うようにキスを繰り返した。
遥は稜而の下唇をするりと吸い込んで舌を這わせ、稜而は遥の上唇を口に含んで舌を這わせた。互いの口角を舌先でくすぐりあい、おどけて音を立てたキスをして、深く口を合わせた。
「ん……」
舌が触れあうと遥は小さく声を上げる。稜而は遥をさらに強く抱き締め、舌を絡め取って自分の口の中へ誘い、甘く噛んで舐めた。
呼吸が苦しくなって口を外すと、二人の口の間を唾液の糸が光り、微笑みあった二人はまた口を合わせる。
遥の指が、稜而の背骨の数を数えるように辿り、肩甲骨の輪郭を撫でた。
稜而は遥の愛撫に微笑み、顔中にキスを落としてから、首筋へ舌を這わせ、そのまま身体の正中を辿って臍の溝を舌先でそっと抉り、さらに下って脚の付け根を辿り、内腿の皮膚の薄いところを吸っては紅の花を散らす。
「はあんっ!」
震える膝の裏へ手を滑り込ませ、脚を持ち上げると、なめらかな足の甲にもキスをして、足の指を一本ずつ口に含んで舌を絡めた。
「んっ、はあん……っ」
すんなりとした踵をかりりと噛むと、遥はまた身体を震わせる。
「お前、足、弱いよな」
くるぶしにキスをして、ふくらはぎを甘噛みし、また内腿に朱色をつけた稜而の目に、遥の欲望が見えた。
「俺のこと、欲しいって思ってくれてた?」
遥は口許に手の甲をあてて隠し、横を向いて稜而の視線から逃げたが、素直に頷いて笑った。
「ふふっ。いつだって欲しいって思ってるのん」
「そんなに? じゃあ、上になって。遥の欲しいようにして」
稜而は遥の隣に寝ると、身体の上下を入れ替えた。
遥は稜而に覆い被さり、そっとキスの雨を降らせる。顔にも、髪にも、耳にも、肩にも、胸にも、腹にも、唇を触れさせて、それからそっと稜而の興奮にもキスをした。
「こんなに変化してくれて、嬉しいのん」
舌先でちろりと舐め、次に根元から先端まで一息に舐め上げて、そのまま先端から根元までを口に含んだ。
「うわっ!」
「ひもひいい?」
遥は目を細め、根元を手で包むと、ゆっくり上下させて刺激しながら、先端の形を舌先で辿った。
「ああ……、気持ちいい」
稜而は目の上に腕をのせ、遥が与えてくれる快楽を素直に味わいながら笑った。
遥の口の中にさらさらとした薄い塩気のある液体が流れ込むようになってきたとき、稜而の手が遥の頭に触れた。
「ありがとう。よすぎて限界」
「このまま、いっていいのよ?」
「お前の中でいきたい。いかせて」
頬を指先でくすぐられて、遥は肩をすくめながら笑って頷き、稜而の硬さを薄膜で覆った。
「ええと、ちょっとだけ、お待ちくださいなのん……。……んっ」
稜而の腰を跨いだまま、自分の指にとったローションを後孔へ塗り込めて、遥は自らの刺激にぎゅっと目を閉じた。
「もっと気持ちよくなっちまえ」
稜而は遥の姿を見ながら少し頭を起こし、赤く尖っている遥の胸の粒を口に含んだ。
「やっ、はあん」
「後ろ、ちゃんと続けて」
稜而がそう告げて再び胸の粒を口に含むと、遥はまたそっと自分の指を後孔へ埋めて動かした。
「あっ、ひゃあんっ! 稜而、あんまりしないで。……やっ、止まんないの。自分でして、いっちゃうのよ……」
稜而は遥の言葉を無視して刺激を続け、遥はすぐに観念して高みを目指した。稜而から与えられる刺激を楽しみつつ、自らの指で後孔を犯し、我慢できずに腰を振る。
「あっ、あっ、あっ……、稜而……っ」
遥の身体は瞬く間に燃え上がり、稜而の視線を感じながら遂げた。
「はあっ、はあっ……、いっちゃったのん……。は、恥ずかしいのよ……」
全身を朱に染める遥の背中を撫で、稜而は遥の手を取ってその甲に王子様のようなキスをした。
「素敵だった」
仰向けに寝たまま前髪を揺らし、目を弓形に細めて、今の行為に不似合いな笑顔を見せた。
「ん、もう……っ」
「ねぇ、一つになりたいな」
さらりと前髪を揺らし、小さく首を傾げて笑う稜而の鼻を、遥は細い指できゅっとつまむ。
「そんな顔ずるいのん」
「ダメ?」
「……ダメじゃないのーん」
小さくべえっと舌を出してから笑顔になって、遥は稜而の硬さへ潤いを施すと、ゆっくり腰を沈めて稜而を受け入れた。
「はっ、ん……っ」
遥は快楽に苦悶しながら稜而を含む。そして、根元まで到達すると、ゆっくり腰を上下に動かし始めた。
「ああ、遥……」
ぬらぬらと光る自分自身が遥の尻の間から見え隠れする様子を凝視して、稜而の声は上擦る。
「ん、稜而……っ、稜而、稜而!」
ミルクティ色の髪が乱れ、遥の肩の周りで跳ねる。
「遥……っ」
遥の腰を支えていた稜而の手に力がこもり、遥だけでなく、稜而もまた力強く突き上げて、二人は喘いだ。
「ひゃあん、稜而っ! ああ、はあんっ」
上下に揺れていた腰は、深く飲み込んだまま前後に振る動きに変わり、より深く強い刺激に身を投じて、本能のまま快楽を追いかけた。
「はあっ、遥……、遥っ」
「稜而、いっちゃうのん……!」
「いいよ、いつでもおいでっ。俺も……っ」
遥は稜而に腰を揺さぶられ、激しく突き上げられて、絶頂した。
「あああああんっ!」
遥の絶頂を待って堪えていた稜而も、一層深く遥を穿ちながら思いの丈を放って遂げて、二人の身体にはようやく静寂が訪れた。
まだ大きく上下する稜而の胸の上に倒れ込んできた遥を抱き留め、額にキスをしながら稜而が笑う。
「遥のエッチ」
「あーん! 一緒にえっちっちーしたのに、そうやってはしごを外すのはずるいのん。稜而もえっちっちーだったのよー。あはーんってなってたわー」
「俺はいつだって遥にあはーんってなってる。大好きだ」
「ふふっ、遥ちゃんもいつだって稜而のことをあはーんって思ってるわ。愛してるのん!」
二人は顔を見合わせると、笑みを交わして唇をくっつけ、唇を離してまた笑みを交わした。
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