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パパと恋人の馴れ初め①
目の前に立つ大きな扉。
正確には周りより少し大きい程度なんだけどその扉は大きく感じる。それは、この扉の前に立つ誰もが思うことだろう。
俺はその扉を軽く2回叩いた。
「杏梨?」
「入れ」
中から低くて重い声が聞こえて扉を開けた。
広い部屋の本棚には沢山の本が並んでいる。その向かい側にある腰の低い棚には2枚の写真と綺麗なお花が飾ったある。
写真の1枚は綺麗な女の人。
もう1枚は幸せそうな家族写真。
どの写真にも写っている女の人は千尋やお母さんで杏梨の奥さんだった人。
「治療費か?ちょっと待ってろ」
俺と杏梨が出会ったのはもうずっと前
その時は俺も表向きちゃんとした医者で大学病院に務めていた。
そこに来たのが杏梨と優さんだった。
「今月は抗争もあったしその分多めに入ってる。いつもありがとな」
「確かに受け取りました。ところで杏梨さん?せっかく愛しの恋人が来てるんだから仕事は後でも良くない?」
俺と話しながらも仕事の書類と睨めっこしてる杏梨から書類を奪う。2人でソファーに座ると杏梨は俺の方に少しもたれてため息をついた。
「疲れてる?最近仕事詰めてるんでしょ?」
「誰から聞いた?」
「千尋とか七瀬とか?」
俺がそう言うと納得したような杏梨、
「優さんのお墓参り、今月はまだ行ってないんでしょ?明後日空けておいてね、一緒に行くから。」
「ああ、わかった。」
優さんは9年前に病気で亡くなった。
その時はいつもは温厚は杏梨も荒れてそれを俺は近くで見てきた。
そして、その頃から俺達はお互いに体を求め合うようになっていた。勿論、杏梨に恋愛感情なんてなくてきっとどうしようと無い喪失感を誰かに埋めてもらいたかったんだと思う。
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