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③
「はぁ、お前絶対分かってねえな」
杏梨の声は優しかった。
いつもそうだ、低くて重くて何処か優しい声。俺の好きな声
「俺んとこに来ねえか?今の仕事は辞めろ、勿論どっちもだ。」
「何言ってるの?優さんは?」
「優のことは今でも好きだ。でも、仕方ねえだろ、今はお前の事が好きになっちまったんだから」
その時俺の視界がぐにゃりと歪んだ。
次に頬が濡れていく。
杏梨の手が俺の頬に伸びてそれを拭いてくれた。そこでやっと自分が泣いている事に気がついた。
「好き……俺も杏梨が好き!」
桜の木下でしたキスは塩っぱくてでも幸せな味がした。
「俺の仕事、知ってたの?」
「ああ、最初は冗談かと思ったよ。」
「女の振りをした方がバレにくいでしょ?」
医者という仕事は上手いこと動けば色々な情報が入ってくる。それと昔からの情報網も持っていて、表では医者を裏では情報屋をしていた。
「だとしても危ねぇだろ。もうすんな」
「わかった。でも医者は続けるよ、以外と好きだしこの仕事。」
人を売るのと同じような仕事をしておいて、人を救う仕事が好きだなんてよく言えたと思う。でも、本当に医者の仕事は好きだった。
「じゃあ家の専属医にならねえか?丁度今までのヤツがいい歳でそろそろ引退らしいんだ、」
杏梨のその一言で俺は佐嶋組の専属医になった。
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