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第135話
音楽が鳴り止み茉莉と共に陽介のところに戻ると
彼は希一に茉莉から何か変なことを吹き込まれなかったかと聞いてくる。
「何もないよ
とてもいい人だよ」
「あいつ猫かぶりやがって………」
そう彼は言うけれど本当はお互い大切な兄妹なんだろうなと思う。
「そう言えば碧さんは何処にいるんだろ?
やっぱ生徒会長だし忙しいのかな?」
本当は碧を交際相手なんだと両親に紹介したいと思っていた。
将来の事は分からないが大切な存在がいるのだと
両親に知らせたかったが、彼にも事情があるため相談したいと思っている。
「あの人も両親が来てるだろうしな」
碧の両親………
やはり彼らもたとえ身内でもΩを良く思っていないのだろうか?
それを考えるとまだ交際していることを話すのは
時期尚早なのかと思う。
「ねぇ陽介、俺トイレ行きたいんだけど着いてきてくれるかな?」
「ああ、いいよ」
悩んでても仕方ないし今はまだゆっくり考えていけばいいと希一は前向きに思うことにした。
二人は会場の外にあるトイレに行き再び会場向かう途中、碧の声がすることに気づきそっと覗いてみると彼ともうひとり、女性がいた。
碧とよく似た日本人離れした綺麗な女性で何やら話し込んでいる。
邪魔しては悪いと早く会場に戻らないとと思うもあの綺麗な女性も九条家の人なのかと興味が勝り少しだけ覗いていた。
「貴方最近あの秀一さんのところの子息と親しくしているようね」
「………っ!!
母様、その……」
「その調子でやりなさい」
「え?」
「そうすれば秀一さんも貴方を見てくれる。
そうなればきっと貴方を養子に考えて下さるわ」
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