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第137話
九条家次期当主である秀一の養子になればその次の当主になる確率がぐっと近づく。
だから碧は希一を恋人にした……
あの会話から分かるのはそんな事情。
ショックだった。
それは陽介も同じようで未だ怒りが収まらないようだ。
「なんで、お前は怒らないんだよ?
一発殴ってやればいいのに」
「駄目だよ。折角の学園祭なのに問題起こしたくない」
折角両親も来てくれて楽しい思い出だけを残したいからここで心配かけるわけにもいかない。
そう言うと陽介は納得はしていない様子だが、それ以上は何も言うことはなかった。
両親の元に戻った希一は何事もなかったかのように気丈に両親と接していた。
心配かけまいと………
そして学園祭もフィナーレ。
最後生徒会長、校長の言葉で締められたが碧の姿を直視することが出来なかった。
「じゃあね、希一。
何かあったら連絡するんだよ?」
「分かってる」
母が名残惜しそうに希一に触れている。
けれど、いつまでもこうしている訳にはいかず、父がそろそろ行こうかと促すと最後にまたねと挨拶をして両親は帰っていった。
それを見送るとずっと両親の前で笑顔だった希一の表情 が崩れた。
「希一、部屋戻ろうか」
「うん………」
辛そうな希一の手を引いて部屋に戻った二人。
するとタガが外れたように希一の目から涙が溢れだした。
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