139 / 168

第139話

養子の話しは自分の本意ではない。 「誤解だ!!あれは……」 「ふざけんな!!何が誤解だよ。 否定してなかったくせによ」 「それは………」 その通りだ。 母が恐くて否定出来なかった。 希一が好きなのに彼を守れる程の覚悟がないのだ。 「二度と希一に近付くな」 何も言い返せなかった。 だってその資格など無いのだから…… 「情けないですね 貴方と言う人は………」 陽介が部屋を出ていった後ずっと黙って見ていた。 雫が最初に口に出した言葉がそれだった。 相変わらず主に対しての毒舌だがそれ以上この事について何か言うことはなかった。 それは碧がどうしてこうなったのか、何が悪かったのか。 全部分かっているから何も言わない。 いつも厳しい言葉ばかり言う雫だがこれでも碧の従者。 ずっと傍に居たから彼の事を一番よく分かっているし碧の事を評価し信じている。 だからこそ碧は雫を信頼し傍に置いている。 しかしいつも自分に対し自信を持つ碧は深く沈んでいる。 今回の事は母を恐れ何も言えない自分が悪い。 そのせいで希一を傷付けた。 全て自分の弱さが招いた結果だ。 「いい加減変わらないと……」 分かってる。 分かってはいるが中々一歩前に進めない……

ともだちにシェアしよう!